「だよね!じゃあ、それも治療の一環ってことで、好きに読んでね?」
「分かりました」
「あとさ、ついでに、この辺りで地図か何か売ってないかな。不動産屋の位置だけでも直ぐに知りたいんだけど…」
「不動産屋なんて行くの?」
「そりゃそうだろう。暫く滞在するんだからさ。即入居可で、あの診療所に近い賃貸があればいいんだけど」
珈琲を飲み終えると、この辺りの地図が店に置いてあったので購入し、ついでに、店の店主に教えてもらった近所の不動産に向かい、早速、約束もなく飛び込だ。
飛び入りの客に愛想良く(アスタと分かれば余計に)答えた不動産屋は、例の診療所に通うには遠すぎず、生活の品を買える店も近く、ついでにバスも近い、短期間滞在専用の良い物件にあたりをつけてくれた。
こういう時に便利なアスタの証書(現金を使わず、約束だけで請求がアスタの預金から下りるようになっている)を使って、部屋を押さえたレグサの傍で、「あらあら、隣も空いてるのね?」アガサも、ひょいと、自分の証書を取り出した。
隣で、レグサが「あれ?」と、驚くのが見えた。
「ねぇレグサ、アタシも隣をとって良い?」何がとは告げず承諾を望むと「…構わないけど?」まだ、吃驚している様子でレグサが答えた。
夕方には入れるように約束して店を出ると、また適当な店に入って時間を潰す事にした。
その最中、レグサが、隣で茶を飲むアガサに「まだ付き合う気かい?」と尋ねてきた。アガサの真意を尋ねているようだったが。
「ええ、そうよ」
そんなもの、生憎と持ち合わせてはいなかった。
アガサは何時も、感性で動いているからだ。
面白ければそれで良いと、そう思っているのだ。
だから、にっこり笑って、片目を閉じる。
「一時はどうなるかと思ったけど、―――あんがい楽しーから、もうちょっといようかなと思って?」
好奇心を隠さないアガサに、レグサが、得たような声で言った。
「そうか。君が楽しいのならなによりだ」
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