「…君は、この話は実現が可能だと思うかい?」
「え?出来るんじゃないですか?」
「…流石、あっさりというなぁ」
「けど、そんなに列車があっても不便そうですよね」
「ん?不便?」
「えーと、自動二輪車?ってあるじゃないですか、あれの箱みたいな奴作って、個人個人で移動出来れば便利じゃないですか?」
「いや、それはちょっと無理かな、それだと線路を…――――線路を無くす?」
「ああ、そうですね」
「ちょっと待て!なにがそうですねだ、君、いま物凄い事言ったんだよ!?そうですねで済まないよ!?発想が良いとか、そういう段階越えてるからね?どういうことなの!?」
「いや、どうもこうも…よくあることだし」
此処ではどうか知らないけれど、サノトにとっては全部よくある話だ。そんなに驚く事でもない。
しかし、サノトの当たり前に対し、レグサが「なんだって?」と、大変訝し気な声を上げる。
「君、今のはどういう意味だ、よくあるって、まるで見てきた事のように言うけど」
「え?ああ…特に意味は」
「その言い方で、特に意味が無い訳ないだろう、教えろ」
教えろって言われても…。
どうやって説明しようかと、数秒悩んでから、根元から話してしまった方が、ツララギの時みたいに分かりやすいかなと思い立つ。
説明する技量が乏しいので、迷った時は素直に話すのが一番だと、此処最近でよく勉強したしね。
「あの、今から変な話しますけど、いいですか?」
「うん?分かった、なになに?」
「えーと、その…」
何処まで分かってくれるかは考えず、とりあえず、ツララギの時と同じ説明を試みる。
ツララギの反応を思い出す限り、こちらの人間には突拍子もない話らしいので、流石に今回は、途中で笑われるかなぁ、と、思いきや。
レグサが突然、がたん!!と、椅子から飛び上がった。その目はいやに真剣で、気迫に満ちていた。
「きみ」
「は、はい?」
「君が言う通り、その、セカイとやらが、…時間が別に存在する事があり得るのなら、此処では知りえない発展や参入、数多の経済成長を君はその頭に収めているという事だろう…?その知識は、この国の中で、君ひとりだけの物なのだろう?」
「はい…?」
相手の理解どころか、サノトが理解出来ない事を捲し立てられ混乱してしまう。
何を、どう返したら良い物か。よく頭が回らない。
…というか、何だかとても眠くなってきた。不意に、瞼が、くっと落ちる。
「あ、ああ、そうか、ああそうか、合点が行った…!そうか!それで、君のようないち国民が、あの発案を連続的に出した訳か!そうか、君の時計は特別なのか!」
「…あの、すみません、何を言っているのかよく…」
「という事は、君はまさか、線路の無いところから来たのか?線路の無い発展を知っているのか?サノト君、その箱とやらは、君ならどうするんだ?」
「あ、の…」
「君は線路の無いセカイとやらから来たんだろう?そうなんだろう!?君は何を見たんだ、何を知っているんだ、教えてくれ、なぁ!」
「………」
「サノト君、それは、アスタリスクを回避する、ひいては僕の時計塔に…、そうだ、出来るぞ、今しかないんだ、今なら出来る、今だから出来る、トーイガノーツから線路を引き剥がし、列車が消える方法だ、これなら、時計塔が鳴る!あ、」
「……ねむ、…」
「あははっははははははははははっはははは!!!!!」
なんだろう、ものすごく、ねむい。
高いお酒って、飲むとこんな風になるのかな?気を付けないと。
「おやおや?お話が出来なくなっちゃったかな?残念、今夜はこれでお開きだね、ああそうだ、言い忘れてたけど」
今何時だ。日付が変わる前には、帰りたい。のに。
あいつ、ちゃんと、先に寝たかな。
「サノト君、君のお店のお代だけど、担保の代わりに君を貰うね?これが出資の二つ目の条件だよ?―――それじゃあ行こうか」
さきに、ねたかな…。
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