「ご飯と言えばサノト君、今度僕と一緒にお食事でもどう?仕事以外でも僕と関係を持とう」

「…いえ、結構です」

「感じの良い部屋取るからさ、そのまま泊まってってよ、勿論全額出すよ、何ならそれ以上出すよ」

「いえ、結構です」

「食後に僕と運動とかどう?」

「結構です」

「いくらなら良いの?」

いくらでも無いわ!!なんてしつこい援助交際勧誘だ!!

精神が一気に削られた所為で、湧いた食欲があっさりと飛んでいってしまった。

頭を抱えるサノトに、ツララギが憐みの籠った手つきで肩を叩いてくる。

「お前ほんとに、アレな人にもてるね」

ひとこと余計だ友人よ!

もう食事をとる気にならなくなったが、口をつけた料理がもったいなくて、丁度隣にあったスープを手に取り、投槍な勢いで食べかけの麺を投入した。

汁麺にでもしてすすっておけば食べきれるだろう。我ながら良い考えだと自己感心しながら、さて、食事を再開しようと―――した所で、ツララギとレグサが何故かこちらを凝視しているのに気づいた。

二人とも物凄い剣幕だ。何だ、一体どうしたんだ。

「……え、ちょ、サノト、なにやってんの?」

ツララギが漸く、声が出たみたいな風に尋ねてきた。

しかし、自分のなにに対して尋ねられたのか分からなくて、答えようが無かった。

その内、ちょい、とツララギがサノトの手元を指してくる。

サノトの手元には、若干冷めつつある麺入りの汁が、サノトの顔を写しながら静かに波打っていた。

…あ、もしかして、こういう食べ方が無いのかな?

というか、この反応、絶対そうだよな。ええと、どう説明したら良い物か。

「こういう食文化があるんだ」

「まじで…!」

流石ツララギ、主語を省いた説明でも一発で理解したらしい。

しかし受け入れがたいのか、未だ目を白黒させて器とサノトを見比べている。ちょっと面白い光景だ。

そういえばレグサの方は…と、横に振り向いてから、滅茶苦茶びっくりした。

何時の間にか、サノトの至近距離にまで彼の顔が差し迫っていたからだ。

しかし、良くみると、その顔はサノトの方を向いていなかった。何故か、正位置から30度くらい下を向いている。

もっとよく見ると、丁度サノトの手元の辺りを見ていた。恐らく器を見ているのだろう。

こんなに反応される程、衝撃的だったのか?と、疑問に思った次の瞬間。

突然、レグサは身体を元の位置に戻し、自分の分の麺を汁にぶち込み始めた。サノトの方が衝撃を貰ってしまう。

サノトが驚いている間に、レグサはそれを大口を開けて食べ始めた。

食べなれていない所為か、汁が若干零れたりしているが、構わず、暫くソレを堪能し、完食すると、レグサは空になった器をどん!と机に置いて「いける!!」と一声放った。

「サノト君!これ凄く良いよ!美味しいし画期的だし!これなら麺の量を増やさなくても満腹感が出て、これ自体の利益を上げられる!粉ものって元々利鞘がいいのに、それを更に改良できるなんてどういう事だ!最高過ぎるだろ!」

「は、はぁ…?」

「これ専門でもいける!持ち帰りの店とかも!あ、いっそ材料のみを販売して人件費を落とすとか、…ああでも、液体の別添えは持ち運びがしにくいな」

「ああ、それ、カップの麺なら…」

話の流れで口にした言葉に、レグサが物凄い勢いで振り返った。

思わず口を閉ざしたが「サノト君!今何言った?なにいった!?是非教えて!」と、思い切り強請られてしまう。

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