お決まりの台詞と共に乱暴な音を立ててアゲリハが店に乱入してきた。

険しい顔つきできょろきょろ辺りを見渡し、サノトの姿を見つけると一転、顔に花咲く笑みを浮かべぎゅ!と抱き着いてきた。

…これ、毎度やらないと気が済まないのかなぁ、こいつ。

「サノト!お疲れ様だぞ!」

「おー」

「彼氏さんもお疲れさまー」

「煩いお前には言ってない」

「ひでぇ」

多分、わざと労ったのであろうツララギが、自分への批判をげらげら受け取り立ち上がった。

最近、二人のこういうやりとりをよく見かけるようになってきた。なんだかんだアゲリハの辛辣な反応を上手く楽しめるツララギは、かなり肝が据わっている方だと思う。

ツララギは飲み切った缶をサノトの分も掴んで奥に片づけると、ついでに色の違う箱を二つ抱えて戻ってきた。

ソレを、アゲリハとサノトの前において開錠し、中を見せてくる。中には廃棄動力が、ところせましと詰められていた。

「これが今日の分ですよ」

「……ああ」

「今日こそ永久動力が見つかると良いですね?」

早速動力に手を伸ばしかけていたアゲリハが、ツララギのひとことでぴたりと手を止めた。長い睫を上に引き上げてから、さっとサノトの方に振り向く。

迫力のある顔でじっと凝視されたので、若干狼狽えてしまった。

「サノト、何故こいつがそのことを知っている、まさかとは思うが……言ったのか?」

「あ、うん、まぁ」

責められるような口調にどもったが、きちんと肯定する。アゲリハはじっと、サノト顔を眺めたまま数秒黙り込んだが、その内ふいと視線を外して「まあいいか」とごく軽い口調で言った。

「よくないでしょー彼氏さん、サノトにもうちょっと危機感持たせないと、なんせぺろっと俺に言っちゃったんだからさ」

「そこがサノトの良い所でもあるだろうが」

一瞬、アゲリハの瞠目がツララギにも移り、やがてツララギが「まあね」と、眉間に皺を寄せ苦笑した。

「まぁ、賛同するのは癪だがこいつの言い分も頷ける所はある、サノト、私達は探す程希少な物を求めているのだから、これからはみだりに人に話すんじゃないぞ」

「……分かったよ」

「そうだよサノト、俺が二人に見せる前に選別して、盗っちゃうかもしれないだろ?」

それ、前にも聞いたような。

「…だから、ツララギはそんな事しないだろ?」

以前と同じ返答を返した途端、ツララギが相好を崩して、にやにやと机を叩いた。その目は急激に機嫌を落としたアゲリハに向いている。

「ねぇ聞いた?ねぇ聞いた彼氏さん?この無防備な信頼感!かわいいよねーサノト、ほんっとかわい」

「―――喧しい!この話は此処までだ!!」

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