「貰っても使い道あるかな…?」

「まぁ、そもそも使い道があってないような物だから、折角だしどう?」

「…そうだな、貰えるなら貰おうかな」

サノトが銃を受け取ると、ツララギが「大事にしてねー」とへらへら笑って箱をしまった。

「そういえばサノト、話戻るけど今日早かったね、見てくんだろ?彼氏さんは今日来ないの?」

話題を変えてきたツララギの疑問に連なって本題を思い出し、慌てて「そうだ!」と口を開いた。

「動力も見せて欲しいんだけど、その前に頼みたい事があって早めに来たんだ」

「そうなの?どうしたの?」

「実はさ……」

今、仕事先で新作を検討している事と、サノト(と、一応アゲリハ)が一部ソレを任されている事と、今回試作を作って持ってきたのでそれの試食をお願いしたい事を手短に話すと、興味深く話を聞いていたツララギが、話し終えた所でわ!と両手を肩まで上げた。

「すげーなサノト!店の新作任されるなんて!」

「いや、正確には俺じゃなくてアゲリハだけどね…」

「彼氏の手柄は自分の手柄だって!やるー!で、俺はその試食に今から付き合えばいいの?」

「うん、頼めるかな?」

「もちろんだって!なんなら女の好きそうなのも見繕ってやるよ」

「…何で女の子の好きなの、分かるか聞いても良い?」

「おすすめしないよー?」

ですよね。自重しよう。

「しっかし、いっぱいあるなぁ」

「これでも少ない方なんだ、まだ一杯あるんだよね」

「まじで?お前の彼氏中々やるね、商品開発とか向いてるんじゃない?家で待機してるくらいなら知り合いから仕事紹介して貰おうか?」

「えっ、…いや、ありがとう、気持ちだけ貰っておくよ」

有難いけど、…迷惑をかけない保証が何処にも無い。

「ははは、りょーかい、それじゃ、いただきまーす」

会話をしている間に並べ終わった試食品をツララギがひとつ手に取り口に運ぶ。

咀嚼してから一旦手を止めると、何も言わずに立ち上がり奥から二人分の飲み物の缶を持ってくる。

ツララギはサノトにソレを手渡してから、ひとくち、自分の口を洗って次を噛み始めた。

サノトも貰った缶を両手で空ける。…相変わらず開けにくい缶は中身が零れやすく、サノトの指先を汚してくる。ソレを指先を振って乾かしていると、ツララギが不意に「お」と顕著な反応を示した。

「俺これ好きかも」

「どれ?」

半分程齧られた、ツララギがお気に召したらしいパンは紫色の激辛ソースと、癖のたっぷり効いたチーズがぎゅうぎゅうに詰まったものだった。

普通は辛味をチーズの丸い味わいで抑える所を、これは更に激化されているのが特徴だ。

もうひとくち齧って「んまい」と呟く。余程気に入ったのか、他の何を食べてもソレと比較し、更には商品化を強く熱望してくれた。

一応、他の感想と共に、これは得に期待がありましたと、持っていたノートに書きとめておく。

「女子ならこっちの甘いソースと香りの強い香草が入ったやつかなー、よくありそうでない感じが良いかも、しかも甘いから一部に凄い受けそう」

「おー、参考になるよ、有難う」

何せサノトの身内は男ばかりなので客観的にでも女子寄りの意見を貰えるのは大変貴重な事だ。

貰った意見をひとつにまとめてから机の上を片付け、最後に礼を言おうとした時。

「おい間男!サノトは来てるか!」

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