「それで、帰る為には永久動力が必要なんだ、グランディアシリーズに差込口が似てるらしくてさ、お前の店とか他の店でも探してるんだけど…」

「えっ、…待ってサノト、それ俺に言っていいの?」

説明の途中で突然、ツララギが動揺した声で待ったを掛けるのでサノトまで動揺してしまう。

「え?なにか駄目だった?」と尋ねれば、ツララギが目線をサノトから外し、意味深な息を落とした。

「…確かに、彼氏さんじゃねぇけど、心配になるかもこれ」

「え?」

「何でも無い、それよりサノト、今の話これから他に言っちゃ駄目だよ?」

「…そんなに変だったかな、世界の話」

「そこじゃないって!グランディアシリーズから永久動力が出やすい話だよ!なんか聞いてる感じまじっぽいし、そうじゃなくても永久動力探してる奴なんてごまんといるんだから、その話漏れたらサノトが見つける前にとられちゃうかもしれないだろ!大体、俺がその話聞いて、お前等に商品見せる前に自分でさっさととっちゃったらどうするんだよ」

「ああ、なんだ…ツララギはそんな事しないだろ?」

「………」

サノトの言い分を伝えた途端、ツララギがは、と口を大きく開いた後、ぼふん!と音が立ちそうな程顔を真っ赤にさせた。

大変珍しい反応にぎょっとする。その間に、ツララギは自分の顔を慌てて隠していた。

「や、やべっ、今きゅんとした!やだもうサノト君ったら!もー!」

若干落ち着いた顔色に手をあて、やだー!と羞恥を拡散しようとするツララギを見て、少しだけにやにやした。

相変わらず(鈴木も含めて)自分への世辞には弱い奴だ。

つつきたいけど、さっき悪戯しちゃったから、勿体ないけどやめておこう。

「いや、ぎゃーぎゃー失礼しました、うん、それにね、サノトの言い分若干当たってるよ、そうだね、俺が盗むかもしれないっていうのは心配しなくていいよ」

「どういう事?」

顔色を普段通りに戻したツララギが、ふと瞼を下として頬杖をつく。

「注意しておいてなんだけど、俺、永久動力も動力説も、それを本気にしてる奴も嫌いなんだ、サノトみたいにもっと別の理由があるならさておきだけど」

「え?そうなの?見つけたら大金持ちになれるらしいのに」

サノトは必要性に駆られているのでソレが欲しい訳だが、聞けば宝くじと同じようなものらしいじゃないか。

羨望したり、欲しがったりするのが普通では無いのだろうか。若者なら猶更だ。

それなのに、ツララギは「いらないよ、そんなの」と興味が無さそうに呟いた。その声は強がっているようには聞こえず、唯々閑散としている。

「バランス欠いてさ、良い事なんてひとつも無いからね」

「どういう事?」

「…説明がしにくいなぁ、それを教えてくれた奴が居たってだけの話なんだけど」

「うん?つまり?」

「つまり…」

話を続けようとしたツララギが、唐突に声を落として黙り込んだ。軽く俯き、口に手をあて、目を何度か瞬かせる。

「どうした?」

「いや」

ツララギがパンの残りを一気に口に入れ、胸糞悪そうな顔を浮かべる。味覚への嫌悪かと思いきや、それよりももっと、顔には気迫が迫っていた。

その表情を、サノトがおかしいと感じる前に、ツララギが「あー!」と声を上げ、喉を叩く。

「ごめん喉つまった、珈琲のおかわりくれる?」

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