「ま、そうだね、あの投資にも可能性があるという事に関しては僕も否定しない」
「では、その裏付けの取れた奇跡をあっさりと見限る根拠は?」
「勘!」
「…貴方らしい」
「それにね、わざわざ空に飛ばさなくても列車が通る場所は他に存在するよ」
「それはまた、一番ひと気の無い投資に走りましたね、また地面に線路を増やす気ですか?」
「違うよ、地面にもう線路は要らない、だからと言って空に飛ばす必要も無い、そこにも書いた通り、―――――ば良いだろ?」
「………今更ですけどこの話、俺にしても良かったんですか?」
「お前だから話すんだよ、線路屋のご子息様?これの実現は現状を見越した上で可能でしょうか?今回はそれを聞きにきたんだよ」
「昨晩ヤる事散々やっておいて本題がそれですか」
「あれは運動ー、で?どうなの?」
「…ま、そうですね、技術的な事は問題ないでしょう、それが承認を得て通れば出来ると思いますよ」
「やりぃ!じゃあ本格的に練るかな」
「ほどほどに」
「してたら出し抜かれるのが投資の常だろ?」
「そうですね、それでは貴方のご勝手に」
「させてもらうねー、じゃ、僕もう行くよ」
「どちらへ?」
「まずはトーイガの三番街、結構前にした不動産投資のついでに買った別荘がそろそろ痛むかもしれないからさー、業者入れて手入れしてくるよ」
「うちが大変な時に優雅なことですね、羨ましいですよ」
「だろー?ま、美味しいお茶でも飲みながらゆっくり寄っていくよ」
楽しい気分にふと、男が声を刺した。振り返ると、男がこちらをじっと見つめている。表情の無い顔なのに、その視線はあらゆる感情を含んでいるようだった。
「…レグサ、さいごに教えてください」
「ん?なあに?」
「今回、アスタが中央列車と契約したのは次代の時計塔を決める為ですか?」
「なぁんだ、ゴトーの癖に察しがいいじゃない、そうだよ?お前等は所詮時計塔の材料だよ、ふふ、たくさんお金を貸してあげるから、精々その死にかけの身体が、僕らの重みにつぶれないようにね?」
「もう一つ教えてください、貴方は時計塔を本気で目指すおつもりですか?」
「目指す?違うよ、なるんだよ」
「………大した自信ですね」
「そりゃあもうね、誰にも負ける気がしないよ、この事業計画と時計塔は、始まる前から僕のものだ」
「その自信で精々足元がすくわれないようになさって下さい、馬鹿らしくて笑えもしないので」
「ゴトーの癖に生意気な、なんだったら、――時計に誓ってやろうか?」
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