「俺が勝手に先走っちゃったみたいだな、余計なおせっかいしてごめん」
「そんなこと…っ」
「あー!謝りっこは無しね!お互いちょっとタイミングが悪かったって事でもう無しなし!」
「ごめん」と言いかけて、止める。確かに謝り合うのは不毛だし意味が無い。
その代わり、にっと笑って見せると、ツララギも眉を下げて笑った。これでいいよな、うん。
「それよりも、ほんとくせの塊だねー彼氏さん、あれじゃ確かにサノト苦労するな」
「え?ああ、うん、まぁね…」
「けどま、大丈夫だよ、サノト凄く愛されてるみたいだから」
急に耳を疑う事を言われ動揺した。あの愛情表現の何処に、どう大丈夫と解釈が出来るのか。むしろ、その所為で文字通り滅茶苦茶苦労してるのに。
サノトの疑問が表に全て出ていたのか、ツララギが楽しそうにその顔を人差しと親指で指でぎゅ、とつまんだ。
「そんな顔するなって、大丈夫だいじょうぶ、あのさ、恋人も身内もなんでもそうだけど、そこにどれだけ好意があるかっていうの結構大事だよ?それを思えば、あれ、どうにでも出来るって」
「…ごめん、何が大丈夫なのか俺には全く分からないんだけど…」
「うーんそうだなー、じゃあちょっと実践してみるか、例えば…」
ツララギが何かを言いかけた直前、向こうから「こらぁああああ!!」と待機していたアゲリハが割り込んできた。即座に横から抱きくるめられ、視界を塞がれる。
「隠れて密会か!いい加減にしろ縛り上げるぞサノト!!」
熱烈で若干痛い抱擁と文句に、いい加減にしてほしいのはお前の方だよね?と、思ってもげんなりし過ぎて言葉が出なかった。が、代わりと言わんばかりに「このくらいで冗談だろ?」とツララギが物を言った。
自分も、アゲリハも驚いてツララギの方を見る。
「ねー彼氏さん、さっきから見てて思ったけどちょっと妬き過ぎじゃない?まだ此処で俺とサノトがキスでもしてたなら話別だけど、手繋いでた訳でもないのにさぁ?そんなに好きな相手尻軽にしたいの?」
「なんだと!この」
「ははは、これさー、サノトじゃなくてサノトを疑いまくってるアンタの愛情の方が疑わしいよね?ねー?サノト、そう思わない?」
「………………………………………………………………」
サノトを抱きしめたままがっと噛みつこうとしたらしいアゲリハが、疑わしい、の部分で驚く程静かになった。見上げて顔を伺うと、目を白黒させているのが見えた。
「サノト言ってたよー、彼氏がめんどくさいって」
今度はめんどくさい、の部分で汗をどっとかき始めた。ぶるぶると震えながら見上げるサノトを見下ろし、顔を両手で挟んでくる。
「おい、どうし」
「………わ、悪かった!私はそんなつもりじゃ無かったんだ!」
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謝った!?
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