「貴様が間男か!」

「え!?何の話!?」

「喧しい!帰るぞサノト!」

「帰るか馬鹿」

反発した瞬間むぐっとアゲリハが口を閉ざした。その隙にツララギがサノトの肩を持つ。

「えーと、どちら様?」

「ああ、こいつが…」

「サノトの恋人だ!」

先に言われてしまった。いや一応そう言おうとしたけど、ちょっと自己主張し過ぎじゃない?

「…あー、例の?ああうん、凄く癖のありそうな人だね」

「喧しい間男、サノトから離れろ」

「さっきから間男って何!?」

困惑するツララギの隣で溜息を吐いた後、くるっと隣を向いて耳打ちした。忍び声から事情を察知したツララギが、「あー」と苦笑してアゲリハに向き直る。

「何だ、俺とサノトの仲疑ってんの?やだなー彼氏さん、心配ないですよ、俺女の子しかいけないんで」

「見る目が無いな」

「この人さっきから失礼じゃない!?」

「喧しい、大体図々しいぞ貴様何時まで肩に触れている!早くサノトから離れ」

「アゲリハ、解いて欲しく無かったら今すぐ隣の椅子に座れ」

これは埒が明かないと判断し、今一番効きそうな物、首に巻いたリボンにわざとらしく手を掛けた。いわゆる強制破局宣言だ。

予想通りアゲリハの動きがびたりと止まった。暫く不服そうな、困惑したような顔を交互に浮かべてから、大人しく近くにあった椅子に腰かけた。と同時に、その頭を思い切り叩いてやる。

「ったくお前!結局来るなら初めから大人しくしてろ!」

「だってぇ、だってぇ」

「だってじゃねぇ!次やったらマジで解くからな!」

「…気を付ける」

「ほんとだっつの!」

サノト達のやり取りを黙って眺めていたツララギが、切りの良い所で「もう良い?」と手を上げた。サノトは頷き、アゲリハは目を逸らす。

「あ、あー…あ!良かったなサノト、これで恋人さんと好きなの選べるじゃないか!」

「…そーだね」

「だよなぁ!彼氏さん、今日サノトね、婚約首輪を…うわー無視ですか、まぁいいや、それじゃ、好きに見てってね?」

他の箱も開錠し、それをサノトに見せてくる。石だけが詰まった物から、それが装飾品にされているものまで、目が綺麗になりそうな程皆艶やかな出で立ちだ。

中身を覗いていたサノトの隣でふと気配を感じた。振り向くと、そっぽを向いていたアゲリハが何時の間にか箱の中身を真剣に覗き込んでいた。

不機嫌そうな顔は成りを顰め、ひとつひとつをじっくり眺めている。

「…グランディアか」

「そうそう、それを主に今仕入れてるんですよ、此処だけの話、元々人気だけど近い内にもっと人気が出るかもしれないって話でね?まぁ、お二人には関係ないでしょうけど」

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