「永久動力とはな、半永久的なエネルギーを保つ動力源の事だ」

セイゴが出て行った後、アゲリハが急に話を振ってきた。

一瞬何のことかと思ったが、少し考えてからきちんと線を結ぶ。多分、先ほどの話の延長だろう。

「その永久動力っていうのが、あの列車の特別な動力ってやつなのか?」

「そうだ」

「けど、あれきりしか無いとか…」

「此処には、という意味だ、サノト、永久動力とはな、国中に複数存在するものなんだ、動力説という話しがあってな、…少し長い話になるぞ?良いか?」

「どうぞ」

「分かった、分からない事があったら聞いてくれ」

咳払いをひとつしてから、アゲリハが真剣な面持で語り始めた。

「その昔な、とある男が廃棄動力の中に見た事の無い型番を見つけたそうだ」

「廃棄動力って?」

「この国では物や人などを動かす為の道具を動力と呼ぶ、使い切って廃棄の対象になった物は廃棄される動力として分類し、繋げて廃棄動力と呼ぶんだ」

「俺の所だとそういうのって液体が主流だけど…型番が付くって事は形があって、しかも複雑なものなのか?」

「複雑だと思った事は無いが…お前にとっての動力が液体のような無形のもので慣れ親しんでいるのなら、お前にとっては複雑な物かもしれんな、此処では動かす為の物に動力を差し込んで使用する、型番が存在するのは、差込口に種類と年代が存在するからだ」

「…よしじゃあ、俺の所は液体で、此処は道具みたいなものを使って機械が動いてるって理解する」

「分かりやすい解釈だな、続けていいか?」

「よろしく」

「その男がだな、その廃棄動力を、まだ使えそうだったから試しに差し込み口を弄って自宅の機械に使ってみた所動いた、これは儲けたと、男はそれを使い続けたが、ある日違和感に気付いた」

「違和感?」

「ああ、何日経ってもその廃棄動力が途切れなかったそうだ、これはおかしいと思い、男は試しに別の、もっと消費の激しい機械にそれを取り変えて使用した」

「………」

「何日経っても、何年経っても事切れなかった、その――廃棄動力に見えた動力は、普通の動力が保つ容量を異常に越していたんだ、男は確信した、これはおかしな物を拾ったのだと、男には商才があったようでな、その動力に直ぐ金銭価値を見出し、様々な事業を考案し、その為の金を借り、借りた金と動力を元に何倍もの利益を生み出した、一代で富を築き上げたんだ、その動力の正体が今先ほど言った永久動力に当たる」

「へぇぇ……」

「これが動力説の一番有名な話だな、この他にも複数記録がある、つまり、永久動力が複数存在するという裏付けだ」

「そんな物が何で幾つも…」

「謎の富は存在するが、その真意は分からない、というのがオツらしいぞ?」

「さようですか」

「…この話の一番の肝は、その話の元になった人物がまだ存命していて、未だ富を築いている所だな」

「それすげぇな」

「だろう?という訳で、こんな美味い話は無いからな、昔に比べて落ち着きはしたが、今でも躍起になって探している奴等はたくさんいるよ、まぁ、偽物や、嘘の情報が金になっている今では容易に見つかる物ではないがな、事業展開を望むより博打に近いだろう」

「ちょっと待て、俺たちその容易に見つからない物を今から探すんだよな?何か話聞いてる感じ物はあるけど絶対無理っぽいみたいな風じゃなかったか?」

「まぁ待て、此処までは一般論だ、そもそも私たちは他よりも簡単に永久動力を見つけられる筈だろう?」

「は?どうやって?」

「どうやってって…、サノト、そもそも私たちはなぜ永久動力を必要としているんだ?」

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