二人で楽しそうに笑い合っていた最中「こっちの人が、昨日言ってたひと?」サノトの方に話が移動した。

小さく会釈をすると、女の子も会釈を返してくれる。

「お、男も集まってきたな」再び、鈴木が何処かに手を振ると、直ぐ、男の集団がサノト達の回りに集まり、思い思いに声を掛け合って、輪になっていった。

あっと言う間に増えた人だかりは、全員が同い年という事もあってか、同感を呼び起こす雰囲気を作り出していた。

話しかければ返し、話しかけられなければ黙っていると、その内、鈴木が「さーのと」耳打ちしてきた。

「ね、可愛いだろ?」何を指しているのか直ぐに分からず、呆けていると、それに気づいたらしい鈴木が「女の子だよ、お、ん、な」補足を付け足してくれる。

咄嗟に辺りを見渡して、女子全員の顔を確認すると、おもむろに頷いた。確かに、みんな可愛い。

「気晴らしついでに、好きそうな子が居たらいっちゃえば?」

「ええー…俺はいいよ」

「まぁまぁ。ついでだって、ついで」

「なに話してるの?」女子から不意打ちに話しかける。

「女子の顔が可愛いと思ってた」なんて言える筈もなくて、狼狽えていると、鈴木がすかさず「君のことだったりして?」とおどけて見せた。女の子が、嬉しそうにはしゃぐ。

女子の扱いに慣れている友人を見ていると、羨ましいような、そうでもないような、不思議な気分になる。

「大体集まったみたいだし、場所を変えようか」これからが本題だと、全員のテンションが程良く上がりかけた、その時。

「あ、ちょっと待って」

誰かが制止の声を上げた。振り返ってみると、先ほど、鈴木と楽しそうに喋っていた女子が、片手を上げながら、もう片方の手でスマホを弄っていた。

画面から顔を上げると、困った風に顔を歪める。

「ごめん。もう一人待ちあわせてたんだけど…連絡が取れなくて」

陽気に水をさされ、周囲の気配が沈む。困り果てた女子は、咄嗟に「どうしよう」鈴木に振り返って責任の是非と問うた。

少し考える素振りを見せた後、鈴木が、にっこりと笑う。

「着て行く服に迷ってるのかな?それは期待が大きいね。でも、遅刻はいかんなー。仕方ないから、次に向かう場所だけ連絡して、後で合流する形にしようよ。向こうも、それなら丁度いいんじゃない?」

「そりゃ、向こうはそれで良いかもしれないけど、…でも、連絡寄越さないで、途中参加するなんて」

「大丈夫だいじょうぶ!女の子が遅刻したくらいで白けるような、つまんねー男此処にはいないからさ!ねーみんな、俺の友達、良い男なんだぜー?今日は、好きに選んでいってね?」

鈴木が男女共に同意を求めた瞬間、それまで落ち込んでいた場が一気に和んだ。相変わらず空気を読むのが上手い奴だ。

鈴木を見ると、丁度向こうもサノトの方を向いていたらしく、ばちりと目が合った。

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