そんなの普通じゃないか?やっぱり、住んでる国が違うと、感性も違うのかな?
そういえば、こいつ、自分の国に何時帰る予定なんだろう?そろそろ聞いておかないとな。延々居座られても困るし。
………。
「…なぁ、お前その内帰るんだよな?」
「うん?そのつもりだが?」
「…ふーん。あのさ」
「うん?」
「…あのさー」
言いかけて、止めて、また言いかける。それは「疑問」だった。
帰宅しても、料理をしても、彼と話している間も、ずっとこびりついて消えなかった疑問。
鈴木には、どう思われるか分からなくて聞けなかった。
けど、どうしても、その疑問を誰かに確認して貰いたかった。自分で分からなくなる前に。
後に此処から居なくなる彼ならば、それを尋ねても弊害が無い事に気づく。
意を決して、逃げ腰の疑問を喉から引き剥がした。
「…俺って、薄情なのかな」
サノトが抱えた疑問とは、恋人であった彼女に対しての事だった。
連絡を見ても、未だ不通である。そんな彼女への傷心が、早めに拭えた。それ自体は喜ばしい事だったのだが、逆に言えば、彼女だった筈の人をこれだけ早く忘れてしまうのは、恋人だった身としてはどうなのだろうか。
なんだか、自分の情が何処にあるのか、分からなくなってしまう。
「なんの話だ?」唐突な問いかけにアゲリハが首を傾げる。
先走っていた事に気づいて、「うん。俺、ちょっと前に恋人が居たんだけど。振られても直ぐに気にしなくなっちゃったから、薄情なのかなって」慌てて補足を付け加える。
アゲリハが、興味深そうな笑みをサノトに向けた。
「ちょっと前とは何時のことだ?振られた理由は?」
「…一週間くらい前で、実際に、振られたんだって分かったのは昨日だよ。振られた理由は、喧嘩かな。顔も見ずに、連絡だけで切られたんだ。早速、他の男に乗り換えてる所も、見ちゃったんだ」
恋人の事が大切だと思っていたし、自分なりに真剣に付き合っていたのに、あんまりだったなぁ。
そう言うと、アゲリハが「それはそうだろうな」と、斜めから言及してきた。なにが、そう、なんだろう。
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