後は味噌汁でも…あれ。うわ、味噌が無かった。まじか。気づかなかった。

仕方ない。めんつゆはあるから、今日は吸い物でも作るか。…よっし。

「良いにおーい」

料理が中盤に差し掛かった頃、お菓子を食べながら待っていた筈のアゲリハがにこにこキッチンに入ってきた。

大方、お菓子を食べきって暇になり、構って欲しくなったのだろう。

うろうろ、手の空かないサノトの周りを行ったり来たりしながら、出来上がっていく料理を嬉しそうに眺めていた。

「これ、サノトが全部作ったのか?」当たり前の事を聞かれ、面倒だったので「そうだよ」と適当に頷いた。

「すごいな!私では屹度作れないぞ!」

「なに言ってんだ。料理のひとつやふたつくらいで、大げさな」

「いや?私は料理がちょっと苦手でな。よく、食べられない物が出来てしまうんだ」

「はぁ?どうやったら、食べられる物から食べられない物なんて出来るんだよ」

「何でだろうな?私も知りたい」

「なんだそれ…」

いまいち要点を得ない会話をしている最中、漸く料理が出来上がった。

予定通り一汁三菜でまとまった料理を手に持ち、アゲリハにも、暇そうだったので配膳を促した。

二人で料理を中に運んで、その際、相手に「箸は使えるか?」と尋ねた。

「はし?」首を傾げた相手の言葉を待たず、キッチンに戻ってスプーンとフォークを取り出す。

それを差し出すと、アゲリハが漸く意図を掴んで「ああ、食器か。有難う、これなら使えそうだ」と頷いた。

炊き立てのご飯の匂いを吸い込みながら、アゲリハがご飯の山を減らしていく。見た目より良く食べる奴だ。

そんな事を考えながらアゲリハを見ていると、ふとした瞬間、ぱちりと目が合った。「どうした?」と聞かれたが、特に意味なく見ていただけだったので、「嫌いなもん無かった?」適当な理由を作って誤魔化した。が、そういえば、これ重要だったなと、今更気づく。

「物凄く苦い物が無ければ大丈夫だ」

「ああ、はいはい。無いから大丈夫だな」

「うん。それに、他の国のごはん、おいしい。手作りだから余計においしい。不思議だな、どうして店の物と手作りのごはんは、味が違うんだろう」

「そんなの、気分だろ」

「ああ、それだ!頭が良いな、サノト」

「…そーですか」

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