理不尽な流れに全身が震えたが、結局、原因がその場に居ない所為で、怒りも文句もぶつける事が出来なかった。

暴れる怒りを耐える代わりに、「…あの野郎」怨みを呟きながら、扉の前に移動した。

そして、がちゃん!と、家の鍵を下ろした。






雀の鳴き声が聞こえる、典型的な朝を迎えた。

頭と身体を指でひっかいてから、ひとつ伸びをする。眠気がガスのように抜けて気持ちが良かった。

着替えを済ませてから、ふと時計を見ると、短針が丁度7時を指していた。何時もより少し早めの起床だ。

とりあえず、更にすっきりしようと思い立ち、洗面所兼手洗い場に向かう。

その最中、サノトの足にがさりと何かがぶつかり、起き抜けの目を見開いた。

それは床に転がる塵の類だった。部屋を見渡してみると、覚えの無い塵が散乱している事に気づく。

あれ?何でこんなに塵が落ちてるんだろう。昨日何かあったっけ?

不意に、何かを思い出しかけて―――そういえば、今日は燃える塵の日だった事を思い出す。

壁掛けのカレンダーを見ると、今日の日付にしっかりと赤丸が書かれていた。

この前出し忘れたので、今日こそはと書き込んだのだ。

とりあえず先にトイレを済ますと、溜まっていた塵と散乱していた塵をかき集めて袋に放り込み、口をぎゅうと縛り付けた。

粗方片付け終わると、部屋が随分綺麗に収まり、何時もの様子を取り戻す。…しかし、気分は完全にすっきりしなかった。

何か、気持ちの底にもやっとした物が残ったのだ。首を左右に傾げてみるが、筋が痛くなるだけだった。

…寝起きだからかな。それらしい理由をつけて疑問を押し込めると、今度は塵袋を掴んで玄関に向かった。

一端袋を置いて鍵を掴み、ガチャリと扉を押し開く―――と、そのとき、自分でも袋でも無い何かが扉にごん!と当たった。

驚くサノトの真下で、何故か、しくしく、恨みがましい泣き声が聞こえてくる。

………あ。

そこで漸く、記憶の底に潜んでいた、前日の一大事を思い出した。

本当に戻ってきたのかよ。心の中でため息をつくと、一端足を引いてから、目の前に座る迷惑な粗大塵の背を蹴飛ばした。

すると、粗大塵は間抜けな悲鳴を上げてから、ぐるんと、サノトの方に振り返った。

サノトの姿を見つけると、一気に顔を崩し、わんわんと喚き始める。

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