「無理は承知でもう一度聞くが、私はどうしたら良いかな!なにか、私に望みのありそうな場所などは無いのか!」
「…は?望みのありそうな場所って、そんなのしらねぇよ。大体、俺に、お前のおホモダチ探しを手伝えってのか?」
「運命の人だ!」
「いっしょだっての」
「頼むサノト!男がたくさん居て、それなりに望みのありそうな場所は無いのか?」
「そんな事言われても……あれ。あるかな」
そういえば、と手を叩く。あったかもしれない、都合の良い話。
聞かされた当初は笑い話だったが、まさかこんな所で掘り返すとは。
「おいアゲリハ、良いぞ、教えてやる」そう言うと、「ほんとか!」相手が身を乗り出してくる。
喜び勇む相手を押しのけ、近くに放り投げてあった鞄から、ノートと筆記具を取り出し、適当に頁を割くと、簡単な地図を書き始めた。
粗方書き終えたところで、出来立てのお手製地図を相手に渡した。
「良いか。此処が現在地で、外に出て道に入ったら直ぐ右に曲がる。進むと、こんな形の看板が見えてくるだろうから、それを目印に真っ直ぐ歩くんだ。暫くすると大きい公園に着くから、そこに入って適当に座ってろ」
「公園に行けば良いのか?」
「ああ。お前みたいな考えの奴は、皆この公園に夜集まってるって、聞いた事があるんだ」
経路と根拠を説明してやると、アゲリハがぱっと顔をほころばせた。
そのまま、アゲリハはサノトの手を取ると、「ありがとう!」本日何度目かの謝礼を叫んだ。
サノトの返事も聞かず、早速アゲリハは立ち上がると、扉に走り寄って行った。テレビのリモコンくらい切り替えの早い奴だ。
しかし、これで漸く、謎の派手男とバイバイ出来るらしい。ほっと、安堵の息を吐く。気が抜けるほど、ああ良かったと思った。
「じゃ、サノト。朝には戻るな!」
「………はい?」
「いってきまーす!」
扉を開けて、閉める迄の間、まるで当たり前のように残していったアゲリハの言葉に、唖然としてから…絶叫した!
はい?朝には戻る?おい待て。飯を恵んで目的の世話までしてやった上に、何だその言葉は!お願いですら無かったぞ!
まさか…居付く気か?拾ったからには、最後まで責任を取れと?
「お…!ま…!な…!」散々絶叫した後、反動で言葉を無くしてしまった。無くした言葉の代わりに、わなわなと、唇が無駄に戦慄く。
何て図々しい奴なんだ。というか、普通、こっちの方が必死に頼み込む事じゃ無いのか?そうじゃないのか!
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