「うーん。まぁ、一応?」

ええー?これが?変質者だよ?

君主って王様みたいなものだよね?そんなのが、どうしてこんな所にいるの?

「でも、実権はないかな。お飾りのようなものだ」

あ、王様とは違うのかな?じゃあ、偉い役職の人が旅行に来たってこと?

えー。だからなんで、それがコンビニの前に座って号泣してるの?

戸惑うサノトの傍らで、男が脈絡のない笑顔を見せた。

それから「良い良い」と、サノトの目の前で手を振って見せる。

「そんなに考えなくても良いぞ?」

「はぁ…」

「常識が違うのもお前が私の国を知らないのも想定の上だ。だから、私の国が、此処じゃない何処かだという事と、私が、その何処かに住んでいるという事だけ、簡潔に理解してくれ。それで充分だから」

「ああ…うん」

成程。それはつまり、「細かい事は気にせず、とりあえず鵜呑みにしろ」という事だな。それなら三秒で出来そうだ。

「けどなぁ、折角来たのに、肝心の目的を挫折しそうだ」

「…観光のこと?」

確かにこいつなら、この目立つ容姿と姿で、観光すらぼっきりと挫折してくれそうだ。

「違う違う」呆れ顔になっていたサノトの言葉を即座に一蹴すると、相手が何故か、きらりと目を輝かせた。

何を思ってか、突然机の上に身を乗り出し「サノト、私はな!」抑揚強く喋り始める。

「この国に、運命の人を探しに来たんだ!」

はい?

……ああ、いや。これもいわゆる「深く考えるな」に掛かるのかな?うん、だよな。

「そっか。お前だったらその顔で、女の一人でも十人でもひっかけられるよ。頑張れ」

あくまで着替える前提の話だけど。と、補足する前に、目前に居たアゲリハが、突然ものすごく嫌そうに顔を顰めた。

その顔を見た途端、一瞬で息が引っ込む。

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