それを覗き込んだ鈴木が、ひゅ、と、息を呑む。不意打ちだったのだろう。

「…これが来た直ぐ後にさ、俺もつい、かっとなって。そうだな、別れようか!なんて、書いて送っちゃったんだけど…日を跨いで、頭冷めたら反省して。言い過ぎた、向こうに謝ろうと思ったんだ」

「…うん」

「でも、メールも電話も、全然繋がらなくて。三日くらいまでは、まだ怒ってるのかなー、くらいにしか思ってなかったんだけど、四日経って、五日経って…ちょっと不安になってきて。まさか、別れようって、本気だった?なんて、ふわっと考えて」

「…う、うん」

「でも、あの程度の別れ話なんて、お互い冗談の内だろうし、連絡取れないのだって、やっぱり、向こうがまだ怒ってるだけかもしれないし。…そんな事を確認する為だけに、彼女が通ってる学校に行くのも気が引けるし。まぁ、根比べかな。気長に連絡待ってようって、…さっきまでそう思ってたんだけど」

「…さっきまで?」

「…うん、あれ」

話の流れを止め、反対車線のホームを指さした。

サノトが指した方向には、階段に向かいながら、仲睦まじく腕を絡め、お喋りに興じる男女の姿が有った。

特筆する光景ではなかったのだが、サノトにだけは、目の中で大変な光景に成り果てていた。

何故なら、女の方が、自分の彼女だったからだ。

他人の空似かと何度も思ったが、車線向こうの彼女は、誕生日に強請られたブランドの限定モデルバック、彼女と自分のイニシャルチャーム付、を肩にかけていた。

いっそ清々しい程、彼女の証拠が並んでいる。

念のため、画像で何度も彼女の顔を見ている鈴木に確認を強請った。

鈴木は、何度もこちらとあちらを交互に振り向いてから、やがて「あちゃー」と言わんばかりの息を吐いた。

「サノト、乗り換えられたぞ。駅のホームだけにな」

いや、上手いこと言わなくていいから。

「…実は隣の奴、友達でしたー。っていうオチは?」

「いや、あれ完全にクロだろ。…お、見ろ、恋人繋ぎに変えたぞ?その内キスでもしそうだな」

「………」

「ひゃー。女って怖いよな?見切りつけると、次の日に平気でおとこ乗り換えたりするもんな?…って、あ、ごめん」

往生際の悪かった自分に、現実と友人がトドメを刺してきた。

一瞬、視界がぐらついて、膝から落ちそうになる。

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