真っ赤なカラス、空飛ぶ列車、逆さの時計、死ねない動力。
ようこそ、トーイガノーツへ。
列車から空に向けて、白い線が何処までも伸びて行った。
見渡せない程遠い雲の切れ間にまでそれが到達すると、真っ直ぐに延びた白線に、列車が、ガタンと音を立てて乗り上げて行く。
地面が遠ざかり、空がとても近くなる。
なんだろう、これ。
「…なんだよ、これー!」
結局飛び出たのは中身の無い一言だった。
それを、相手が去っていった方向へぶつけると「緊急列車だ!」聞こえていたらしい相手が、律儀に答えを返してきた。
「なにそれ!緊急なのは俺なんだけど!」
「そうだな!結婚したい時は急を要するものだからな!」
「そうじゃないから!俺の緊急それじゃないから!」
「そう不安がるなサノト!大丈夫だ!」
「何が大丈夫なんだよ!」
「私はこれから死ぬまで、ずっとお前のものだからな!」
「だからそうじゃないから!話聞いてー!」
「聞いてるぞ!私も愛しているからな!」
「だめだー!誰か助けてー!」
相手側の扉をこじ開けようとしたが、畜生!中で鍵をかけやがった!
手が出ないので、暫くは口で応戦していたが、その内嫌気がさして、それすらも止まってしまった。
吐きたくも無い息を吐いてから、ふと目を瞑る。
疲れた。頼むから、家に帰って寝かせてくれ。もう疲れたんだって。
ねぇ。なんなのこれ?善行に休日潰して、散々な目に合った最後がこれって、何なの?カラスなだけに仇返し?…わっらえねーよ!
「サノト、聞こえるか?向こうで、わたしと一緒に幸せになろうな!」
―――ひとりでやってろ、馬鹿野郎!
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