「どういうことですか?」

首を傾げたサノトの前で、ガィラが不意に、物欲しそうな顔つきになる。

「すみません」ガィラが、例えば水がなくて乾きそうな声で、苦しそうに謝罪する。

「画集や珈琲は口実です。実は、私は、君にお願いがあってここに連れてきたんです。
君に今日、偶然会わなくても、いずれお願いに上がるつもりでいました」

「え?なんですか?」なにか頼まれるようなことあったかな?

サノトの呆気に対し、ガィラが真剣な顔で迫ってくる。

「叶うのならば異邦の絵が欲しい」

「え??」

「もちろん、君の世界にも絵に価値があるのでしょう。
それが莫大なものからそうでないものまで。様々あるのでしょう。
それに、貴方にも貴方の世界の経済力があるのでしょう。分かっています。
ですから、貴方の経済力が許す限りの範囲で、貴方の世界の絵を私にいただけないでしょうか?お礼はこちらの世界の貨幣をもって、言い値で支払います。
それが、私が君にお願いしたいことなんです」

「えーと」つまり、サノトの買える範囲で、サノトの世界の絵をガィラに融通してほしい。という話かな?

「画集とかでも良いんですか?」

「もちろん!」

「そうなんだ。じゃあいいですよ。その内買ってきますね」

有名な画家なら本屋に行けばいつでも売っているだろうし、取り寄せも出来るだろう。

なんて、軽く考えているサノトの目の前で、「本当ですか!ありがとうございます!」ガィラは大層な喜びようだった。身を乗り出して肩まで掴まれる勢いだ。

「ありがとうございます!いやぁ、アゲリハ様の言う通りだ」

「なにがですか?」

「いえね。アゲリハ様に、貴方が異邦人だと教えていただいた時、私は異邦の絵が欲しいと思ったんです。
その旨をその時、素直にご相談申し上げました。
アゲリハ様に掛け合ってもらい、貴方からこちらに異邦の絵を譲ってもらえないかと。
そうしたら、サノトならきっといいよと言ってくれるから、直接言ってみたらどうだと言われまして。
それで、不躾ながらお願いに至ったわけです」

「なるほど」

「サノト君は気の優しい人ですね。
きっと、異邦の全てが貴方のように優しい人というわけではないのでしょうけれど。そこは流石アゲリハ様です。見る目がある」

「ははは……」結局そこに話を持っていくんだな。うれしはずかし。

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