そこは、青い壁と丸い屋根が特徴的な、広くはないが狭くもない、「こじんまり」という表現が一番しっくりくる規模の建物だった。
個展なんて言うからもっと美術館みたいなのを想像していたのだが。現実が予測よりも三分の二程度小さい。
その旨をアゲリハに伝えると。「サノト。個展と美術館は趣旨が違うぞ」笑われてしまった。
「見せる。という目的は一緒だから根は同じだけれどな。
それよりサノト、チケットは?」
「持ってる持ってる。はい、アゲリハの分」
「ありがとう」
サノトがしっかり保管していたチケット二人分。その内の一枚をアゲリハに渡し、二人並んで会場の中に入った。
綺麗な花が飾られた受付でチケットを渡してから、、もう一枚中にある扉を開いて奥へ進むと、早速、額縁に飾られた絵画と対面した。
絵画は、十畳ほどの部屋の四方に数点ずつ、並べて展示されていた。
絵画の下にはそれぞれの題が掲示されていて、隣のアゲリハいわく、アゲリハ自身が題をつけたものから、ガィラが勝手につけたものまであるらしい。
「おー……綺麗だなー」
出入口に一番近い絵から順々に鑑賞していく。
基本的には黙ったまま眺めるのだが、「ねえ、これなんでリンゴ描いたの?」折角作者がいるので、時折、本人に絵画の意図を尋ねてみたりした。すると。
「そのときの私が、甘酸っぱくて水気のあるものでも食べたかったんだろうな」
「ははは。なにそれ。そんな理由で絵が描けるんだ?」
「余裕だぞ」
「余裕なんだ。絵が描ける人ってすげー」
理由がくだらなかったりして。それが逆に面白くて。
でもこれって、描いてる人が隣にいるからできる贅沢だなぁとも思う。
個展の部屋はもう一間あって、隣もまた、同じ大きさ、同じ整列で絵が並べられていた。
と思いきや。一面だけ趣の違う場所があった。
そこには、一枚だけ絵が飾られている。
それが見覚えのある絵だったので、つい、サノトは他の絵を飛ばしてそちらに歩み寄ってしまった。
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