「それに、サノトの家はアパートのひと部屋だろう?部屋に置ける家具を考えた時、欲しいけれど買い渋ったもののひとつやふたつ。あっただろう。
その点うちは一軒家だからな。気兼ねなく、場所をとっても困らない家具が置ける。
せっかくだし、そういったなにかはないか?」

「うーん……部屋が広ければ置きたい家具。ねぇ……」しばらく、あごに手をあてて考え込んだあと。「あ!」ひとつだけ思い当たる。

「ある!俺!欲しい家具ひとつあった!」

「なんだった?」

「酒を置く棚!」

成人した時からずっと憧れてたんだよね!酒を置く棚!

こう、俺の背丈くらいあって、色合いはちょっと渋い感じで。横に仕切りがあって、そこに色んな酒瓶ずらーーーっと置ける。かっこいいやつ!

などと、欲望にまみれた願望を口にすると。「それっぽいのが丁度、あっちの奥にあったような気がするぞ」と、アゲリハが店の向こうを振り返った。

まじで!?見に行こう!と、必要以上に勢い込んで見に行けば。「おおー!」まさに、サノトが理想としていた棚そのものが、店の壁を背にして置かれていた。

憧れが現実になり、興奮が一気に高まる。

「アゲリハ!俺これが欲しい!」

「よし。買おうか。
私も飲みたいからリビングに置こう」

「やったー!ありがとー!」



家具を注文した二日後。サノト用のベッドと酒棚がトラックに乗ってやってきた。

店員に手伝ってもらいながらアゲリハのうちに家具を運び込み、ベッドは二階の元書斎。棚はリビングに設置された本棚の隣に置かれた。

手伝ってくれた店員に礼を言って、帰らせて。から、すぐ。「酒の棚!かっこいい!」棚に軽く抱き着いた。

「本棚の隣に酒の棚があるっていうのも、いいよねー!おしゃれー!」

ほおずりするほど気に入っていると。「さっそくうちにある酒を置いてみようか?」苦笑するアゲリハの声が聞こえた。

「うん!置く置く!」

頷くと、アゲリハがキッチンの棚から酒瓶を二本取り出して、届いたばかりの棚に入れて飾った。

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