「分かった。
後々、サノトのベッドを買いに行こうか。届くまでに日にちがかかるだろうから、それまでは私の寝室のベッドで寝ると良い」
「別に俺、床に布団しいて寝てもいいよ?」
「しいてねるとは?」
「あれ。こっちって布団ひかないの?床にさ、こう、布団二枚かさねてさ」
口頭かつ、身振り手振りで説明すると。「サノトを床に寝かせるなんて。それをどうしてもする必要があったのならば致し方ないが、そんな可哀そうなことを常にはさせられないんだぞ」哀れられてしまった。
納得がいかなかったので。「いや。お前。布団しいて寝るっていうのは良いもんだぞ」文化の良さを力説したが、同意は得られなかったので、結局「サノトのベッドが届くまではアゲリハのベッドを借りる」方向に流れた。
「そうなると、俺の家用にアゲリハのベッドも買いに行かないとな」
「宜しく頼む」
「まかせて。良い奴買いにいこう」
いつまでも元彼女のベッドで寝て貰うのはどうかと思っていたところなので、渡りに舟だ。この際彼女のベッドも、邪魔だし捨ててしまおう。
それじゃあ、午後になったらサノトのベッドを見に行こう。という話になり、まずは昼食を取ってひといきつけてから、サノトとアゲリハは家を出た。
例の車に乗り込み、アゲリハが「お気に入りなんだ」という家具の店に向かうこと数十分。畑に囲まれた場所にぽつんと建つ、赤い屋根の建物にたどり着いた。
車三台ほどの広さがある空きスペースに車を置いて、白い扉を開くと。
「おお!」中を見て声をあげた。
見渡す限り、家具、家具、家具の山だ。
店の奥ではがりがりごりごり音がして、ひょいとそちらをのぞくと、店員らしき人が、古びた棚に器具をあてているのが見えた。
「仕事中にすまない。ちょっといいか?」
アゲリハがその人に向かって話しかけると、相手がさっと顔を上げた。
「いらっしゃい。どういったご用件で」
「ベッドを買いに来たんだが、今はどんなものが置いてあるか見せて欲しいんだ。カタログもあればそれも見せて欲しい」
「分かりました。こっちへどうぞ」
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