「こっちって、ミルクないからバターもないんだよね?どうやってお菓子作るの?」
「ばたー?」
「乳製品だよ。ミルクから作る、クリームの親戚みたいな」
「ほう。そんなものがあるのか」
「なんだったかな。たしか、クリームの原液をめっちゃ振りまくってると、バターが出来るらしいんだよね」
「どんな形をしているんだ?液状か?」
「固形だよ。あったかいところに置いておくと溶けちゃうから、冷蔵庫で保存しておくんだ。
うちのお菓子って大概それを入れて作るんだけど、こっちはそもそもミルクないからどうなのかなって」
「そのばたーとやら以外は、なにを入れてお菓子を作るんだ?」
「粉と砂糖と卵と水……かな?」
「そうか。それじゃあ、うちのお菓子はばたーの代わりに液状の油を入れるんだぞ」
「え。お菓子に油いれるの?」
「驚くことかな。聞いている感じだと、そのばたーとやらも固形状かつ、うちとは原料の違う油のような気がするのだが?」
「あ。そうか。言われてみればそうだな」
じゃあ、油があればお菓子は作れるわけで。ミルクがなくてもバターがなくても、お菓子は存在するってことだな。
いや。もしかすると、サノトの視野と知識が狭いだけで、油がなくともお菓子はお菓子なのかもしれない。
偏見を見直している最中。「そうか!」いきなりアゲリハが叫んだ。
「え?いきなりなに?びっくりしたんだけど」
「持ち込めばいいんだ!」
「なにが?」
「サノトの国のお菓子が美味しいから、どうにかしてこっちにいる時も、ふと食べたくなった時に食べられるよう常備できないかと常々思っていたんだ。
菓子が食べたいだけでいちいち世界を渡るのは面倒だからな!」
それ、「ちょっとおかし食べたいだけで車出すの面倒だよね」って言ってるようなもんだぞ。仮にも世界超えちゃってるのにな。
「初めは、サノトの国のお菓子をたくさん買って持ち込んでおけば良いと思っていたんだが。私はどちらかと言えば生菓子か焼きたてが好きでな」
「ぜいたくー」
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