「友達はキスしないけどね」

「されたら困るぞ。付き合って早々浮気をするんじゃない」

「しないよ。されてすごく嫌だったから」

大事にするよ。アゲリハさん。

なんとなく呟いてみると、相手がきゅっと、赤くなった。かと思えば、ぎゅっと抱きしめられる。

たくましい胸板が顔面に押しつけられている。のに、香ってくるのは甘い匂いだ。

この人、俺より背も高いしガタイもいいのに、何か可愛いんだよなぁ。

そういえば、俺たちつきあってはみたものの、営みに突入したらどっちが男になるのかな?

あっちは告白するだけあってその手の経験がありそうだから、知識も経験もない俺が受け身になるのかな?

……さて、これからどうなることやら。

「サノト、私も大事にするんだぞー」

おっと。相手はまだ良い話の最中だ。

ひとりでやましいこと考えててすいません。

「ところでサノト。付き合うのなら改めてお願いしたい」

「え?なにを?」

「私の名前をそのまま呼んでくれ。そのほうがうれしい」



付き合い始めてから、アゲリハさん……もとい、アゲリハが、サノトにこう提案してきた。

いわく。「同棲しよう」とのことだ。

「いきなり?」デートもろくすっぽしてないのにそこから?という疑問を呈したが。

「そのほうが、私たちはきっと便利だ」と返される。なにが便利なんだろう。

「半同棲。といったほうが正しいかもしれんな」

「半?どういうこと?」

「お互いの住処を一緒くたにする。というよりはな、お互いの世界に、お互いの部屋を作って、お互いの世界で同棲出来るような形にしよう。という意味での提案なんだ」

「……あー、なるほど。
つまり、俺のアパートにアゲリハの部屋を作って、で、アゲリハのうちに、俺の部屋を作るわけか」

「その通りだ。私たちだからこそ出来る半同棲だ。おもしろいだろう?」

「うん。おもしろいな」

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