「俺、アゲリハさんと付き合うよ」
遊びに来ていたアゲリハさんに心情を打ち明けると、サノトが昨晩買っておいたプリンをもぐもぐ食べていたアゲリハさんの手と口がぴたっと止まり、ついで、にこお。と笑顔になった。とてもうれしそうだ。
「さのと、さのと」ご機嫌なまま手招きされ、「ん?」近づくと、そのままキスされた。前よりもうちょっと深いやつ。
「ん……」甘ったるい味がする。
口を離すと、友人とも盛り上がった美人な顔が、うれしそうにこっちを見つめているのが見えた。
うーん。
今朝までは、男にあれこれ出来るかな、むしろたつかな。なんて、しぶとく考えてたんだけど。
この顔にいろいろ出来るかと思うと、なんとかなるような気がしてきた。
やっぱ現金だな、俺。
「どうしたサノト?」
「おっとすいません」
「なにを謝ってるんだ?」
よこしまなことを考えてました。
とは言いにくいので。「付き合うんなら、改めて恋人らしいことする?」話題をすげかえてみる。が、「あれ、でも」言っておいてなんだが疑問が浮かぶ。
「恋人らしいことってなんだろう?」
そもそもつき合いたての恋人ってなにをするものだっけ?
前の彼女とのつきあいが長すぎたせいで、そのへんの定義がよくわからなくなっている。
くわえて、俺たち男同士だから、男同士の恋人ってなにするんだろう。
セックスが特殊だろうな。以外、よくわからない。
その旨をそのまま伝えると。「別に、夜のこと以外は男女の恋人がすることと変わりないと思うぞ?」あっさり返された。
「仲の良い友達と恋人っていうのは、そう変わりがないだろう。せいぜい、営みがあるかないか、一緒に暮らしているかどうか。
それ以外は、一緒にご飯を食べたり、遊びにいったり。そのくらいのものだろう?」
「それだと、俺は仲の良い友達と遊びに行くときは、デートに行ってるわけだね」
「そうだな。一緒に遊びに行って楽しかった。良い雰囲気になった。という意味では、友人とはデートに行くようなものだ」
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