その後彼女といえば、子供が出来た所為で上司に捨てられ、サノトのところに戻ったかと思えば、堕胎の金をせびられたこと。などなど。半年の間にあったことを一通り説明した。すると。
「なんだその胸糞わるい話は」眉をしかめた友人に、ばっさりと言われてしまった。
「まあ、うん、だよね」俺も改めて説明していたら、つくづく厭らしい話だと思った。
「ていうか、おい、サノト。まさかとは思うけど、彼女が転がりこんできてからどうしたんだ。昔のよしみだっつってヨリ戻したとかりしてないよな」
「そんなことしないよ」
「だよな。よかったよかった。
昔からお前、お人好しだなぁとは思ってたけど、そこまでしてたらどうしようかと思った。
まあけど。出来た子供がかわいそうだな」
「うん。俺もそう思って。この前、あいつに子供下ろせるだけのお金あげてきたよ」
「……は?いまなんて?」
「金あげたんだ。それで、おろすかどうかはお前が考えろって言ってきた」
本当は産まれて来るべきだ。腹に宿った子供に罪はない。その子供が生まれて来ることにも罪はない。
けど、俺は彼女と再会し、修羅場になって思ったのだ。子供が産まれる前に防げる不幸もあるのではないかと。
生きているだけで幸せだなんて、この世の何人が言えるのかと。
少なくとも、半年前の俺は思えなかった。
色々な可能性を顧みて、それに見合った金を置いてきたのだ。
彼女と共に作った、楽しかった思い出と辛かった思い出をいっしょにそえて。
「お前……やっぱり人が良すぎるぞ」
「そうかな。俺はあいつにも、あいつの子供にも、すごく酷いことをしたような気がするんだけど」
「ええ?そうか?
いや……うーん。感じ方の違いかな。当事者かそうでないかもあるかも」
「そうかもな。けど、うん。この件に関してはもういいんだよ」
「そっか。まあ、なにはともあれ、サノトが立ち直ってくれたなら良かったよ。時間は薬ってやつかな?」
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