久しぶりに彼と話し込んでいる内に、「せっかくだし、明日空いてるなら飲みにいこう」という流れになった。

そして次の日。駅に車を停めて電車に乗り、次の駅で降りて、改札口を通ると。「さのとー!」柱の陰から見知った顔が近づいてきた。

「鈴木。ひさしぶりー」友達こと鈴木に手を振ると、「ひさしぶり!」半年ぶりもあってか、嬉しそうに肩をゆすられた。

「おいサノトー!音信不通とかやめろよ!ほんと心配してたんだからな!」

「ごめん……昨日も言ったけど、ちょっといろいろあって」

「分かってる分かってる。その色々ってのが今日の肴だってことだろ?とりあえず酒いれようぜ」

「あっちに良い店あるんだよ」そう言って、サノトの肩を持ったまま鈴木が道を歩き出した。

大体15分ほど歩くと、人通りの少ない場所にぽつんと提灯を出した、ちょっと古いがそこが味わい深い小料理屋にたどり着いた。

慣れた足取りで鈴木が厨房手前のカウンター席に座ると、サノトもつられて隣に座った。

女性の店員がすぐにやってきて、手拭きと水、お通しにきゅうりの浅漬けを置いていってくれる。

「あ、お姉さんすいません。ビールひとつと……サノトどうする?」

「俺ハイボール」

「おっけい。ビールとハイボールひとつずつおねがい。あとこの肉盛りセットとチーズポテサラも」

注文を書き取った店員が、注文票と共に厨房へひっこんでいく。

それから数分もしない内に、酒とチーズポテトサラダと肉盛りセットが、鈴木とサノトの間に割りこんできた。

半年ぶりの乾杯をしてすぐ。「で?」鈴木がサノトの方へ、身体を傾けた。

「なにがあったんだ?この半年の間に」

「あー……えっとー……」

「連絡取れなくなるくらいのことはあったんだよな?」

「うん。まあ……」

さて。どこから説明したものか。

とりあえず「仕事を辞めたんだけど」から話す。

「え?なんで?」

「うん、実はさ……」そこを皮切りに、ずっとつきあっていた彼女が不倫したこと、それが原因でサノトは捨てられてしまったこと、彼女の不倫相手がサノトの上司だったこと。

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