「え。付き合ってもらおうって、おれ?」
「この話のどこに他人が出てくるんだ」
「え、いつ?いつそんな気になったの?」
「ゆきずりの酔っ払いを自宅に連れ帰って介抱した時点で、はなからとは思わないか?」
「ああ……」そりゃそうだ。
俺だったら行きずりの酔っ払いなんてそのへんに転がして帰るな。
え。じゃあ。異世界で目を覚ましたあの時から、俺はアゲリハさんにそういう目で見られてたってこと?
「え?なんで?俺のどこが良かったの?
自分で言うのもあれなんだけど、俺たち顔面の落差がすごいよね?」
「顔がすべてじゃないぞ。
サノトと初めて会った時、良い人そうでいいなと思ったんだぞ」
「えー……っと……、あのー……。
ごめん。ちょっとうまい言葉が出てこない。
あ、誤解しないで。別にアゲリハさんがどうこうじゃなくて。ただ、ほら、25年ほど異性恋愛が普通だと思って成長してるんだ、俺。
そりゃ、最近はそういうの世間的にもゆるくなってきたし、そういう人たちはそういう人たちの生き方があるんだから、自由にやればいいと思うし、隣にいたとしても、その人の人格があんまりにもあれじゃないかぎり、へえそっか。そういう恋愛もあるよね。くらいの気持ちで付き合えると思うんだよ。
でもね。
当事者になると、ちょっと別かなっていうか……」
他人の話ならば「へーそうなんだ」で済むけれど。自分の話ならばそうはいかない。
じゃあきっぱり断ってしまおうかといえば。
……うーん。何分大変お世話になった人だし。
「このひとうまが合うなー」と思っていた矢先に気まずくなるのもなぁ。
せっかく、お互いの家に行き来するくらい仲良くなったのに。
…………。
いや。全部言い訳だ。
俺が気にしているのはそこじゃない。
「少しも可能性はないのか?もしあるのなら、その少しばかりの可能性を私にくれないか?」
「えっ」悩んでいる内に「可能性」を請われて、喉がつまる。
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