次の行動が起こせないまま固まっていると。サノトの様子に気づいたのか、口を離したアゲリハさんが、ちょっと赤くなった顔で「あれ?」と首を傾げた。
「なんだサノト。頭を打ちぬかれたような顔をして。
なにを驚いているんだ?いま、そういう雰囲気だったんじゃないのか?」
「ええ?」声が震える。
なに?何の話をされてるの??
「あれ?……なんだ。違ったのか?やたらと口元を見られるし、リップを貸せなんて言われるからてっきり。キスしたいと思われているのかと」
「い。いやいや。アゲリハさんなにいってんの?おかしいでしょ」
「なにがだ?」
「いやだからさ」お互いなにかを誤解しているらしい。
「アゲリハさんが女だったら、そうだねって話だけど。俺たち男同士なんだから」
そういうと、アゲリハさんは一瞬あぜんとしてみせた後。
「あ、そうか。それはすまなかった。知らなかったんだ」呆けた様子のまま謝罪された。
「どういうこと?なにを知らなかったの?」話の全貌が分からないので補足を求めると。「同性愛」と、アゲリハさんが切り出した。
「その口ぶりからするに、同性が恋愛をすることはないんだろう?」
「えっ。……いや、ないこたないけど。
ごく限られた一部のひとで、それも都市部に多いかな」
「ほとんどないと同意だな?
うん分かった。そうかそうか。すまなかった。私の国は同性恋愛に、お前の国の基準と比較すると大変ゆるいんだ。繁殖する気はないけどパートナーが欲しい。ならば同性で良い。というのは一般的な考えだ」
「えぇえ」
「で。だからその。この国はトーイガノーツと大体似ているから、その辺りも同じなのかと先入観を持っていたのだが……そうか。脈がありそうだなと思っていたのは私だけか。
なんだ。付き合ってもらおうと思っていろいろ頑張ってたんだがなぁ」
「え?」
「だから。がんばってたんだぞ。……下心があるんだって言ったじゃないか」
アゲリハさんの顔がまた、ほんのり赤くなる。
04>>
<<
top