何事だろうと顔を上げると、アゲリハの楽しそうな視線にぶつかると同時に、陰茎に彼の手ではないものが触れた。
彼の腰の位置からして、これはおそらく彼のものだ。触れたそこから、彼の立ち上がったものがサノトの反りあがったものに触れて、「ぁ、」心臓が跳ねる。
「はっ、……」頭上から、アゲリハが熱のこもった息を吐く。
「あぁ、あげりは、だめ、……あげ……っ」合わさった部分を、腰をゆすられたり、手でもみしだかれたり、緩急をつけて犯される。
気持ちよさに白くなっている頭に、アゲリハはそっと口をよせると、「さのともさわって」つぶやきながら、耳の後ろをねぶられる。
「うん、……ん、あぁ」彼の強請りに応えたくて、サノトは無我夢中で自分の両手を下肢に伸ばした。触れたそこがじんとしびれて、雫が、どちらのものか分からないほど増えてこぼれた。
ものすごくいやらしいのに、それでもふと、サノトが情事の合間に思うのは。これ、やっぱりセックスじゃないんだよな。ということ。
したいなぁ。アゲリハと。
天井を知らない欲望が、今は手と下肢に集中する。
「んぁ、あ…はぁ……!」
「は……、さのと……っ」
限界を訴えると、アゲリハに抱き込まれた。
「はぁっ……んんっ」体がより密着したまま、サノトの熱は震えながら中身を吐き出す。
「ん……っ」一拍おいて、アゲリハも息を切らせながらサノトの腰に自分のものをこぼした。
それが太ももにつたって床に落ちるのを肌で感じながら、サノトは、綺麗な顔をゆがめて欲情の熱に耐える恋人の顔に、じっとみとれていた。
*
彼氏に教えてもらった趣味は、その後わりと「その場の勢いだった」という事にはならず、割合楽しくサノトの手に収まった。
彼がアトリエにこもる日や、彼が出掛けている時に、サノトも気が向いてはもらったスケッチブックを開いて彼のアトリエの隅に座り、おすすめのモチーフや自分で書きたいと思ったものを描くようになった。
時々、「描いてみたけど全然上手く描けなかった」という日もあるけれど、そんな時は、それを見ていたアゲリハが笑ってこう言ってくれる。
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