「今日はありがと、アゲリハ。たのしかった」

「どういたしましてだぞ。というより、私も楽しかったからべつにお礼を言われることでもない。
それよりもサノト、もうちょっとこっちにくるんだぞ」

「ん?なに?」

ちょいちょいと、また手招きされて、言われたとおりに身体をかたむけると。

「―――――んっ」上から唇がふってきた。

「ちょ、ん、いきなり……っ」

「いまからは夜の趣味だな」

「その言い方かえって厭らしいんだけど……っ」

「わざとだ」

合わせた唇の隙間からそっと舌が口の表面をなぞって、中に入り込んでくる。

緩慢な動作でもぐりこんだ舌は、入った時とは裏腹な勢いで奥まですべりこみ、そのままサノトの咥内を蹂躙した。

「ん、んんっ……」

数分もそうしていると、頭と目がぼんやりしてくる。口が離れたと同時にソファの背にもたれかかったが、こちらの力が抜けた隙に、アゲリハはサノトをソファに倒した。

「キスがながい……、」上から見下ろしてくる相手にむかって、息をあげたまま、若干なじる。

相手は口元をゆるめて。「わるいな」全然そんな風に思ってない口ぶりで笑った。

「だが、こういうなじられかたはちょっといいな?」

「えー……」よくわからないのであいまいに笑っておくと、再び上から唇を落とされた。今度は口ではなく、首筋に。

「あ、ちょ。そこやめろって、首隠さないといけなくなるだろ……、」

「ん、やだ。ここにしたい」

いやいや言ってるのに、一向にやめてはくれず、結局、体感の計算でいつつくらい、跡をつけられた。

あーあ、と思う反面、下肢はしっかり喜んでいたりするので、結局のところ「嫌よも好きのなんとか」というやつだ。現金な自分に笑えてくる。

「なにを笑っているんだ?サノト」

「んー、ちょっとね。……っ!」

サノトの熱に気づいたアゲリハが、片手を降ろして布越しに触れてくる。体温が一度くらい上がった気がした。

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