「あの……えっと……」どう声をかけたら良い物かと、思い悩むサノトの後ろから。「ガィラ」彼氏の呆れた声が隣を通り、過ぎていく。向かう先は、本やグッズをいっぱい握りしめてふるえている彼の元だ。

「なんだこの量は。お小遣いは3000円までだぞ。計画的に買え」

アゲリハの指摘に、ガィラが、悔しそうに悔しそうにつぶやく。「店ごと買えたならば……!」

「ここは異世界だぞ。慎めガィラ」

「分かってます!分かってますけど……!でも……!サノトくん!!」

「は、はいっ」突然呼ばれたので、何事かと思えば。

「あちらに戻った際に、私の資産を一部譲りますので、サノトくんの資産を譲ってはいただけないものでしょうか……!」

「え、ええ……」それどのくらいの規模の話?と、確認するまでもなく。アゲリハがカゴを掴んで、ひょいひょい、購入前の商品を戻していく。

「ああ!そんなご無体な!!せめてこれだけは……!」ガィラが泣きそうな声で懇願しているが、「しったことか」とにべもない。

結局、ガィラの欲しいものは厳選に厳選を(無理やり)されて、大体3000円きっちりに収まった。

レジで会計をしている間、ものすごく不服そうな顔をしながら、隣にいたアゲリハに「アゲリハ様。あなた自分のお小遣いのおつりがあるなら私に譲っていただけませんか?」としぶとく交渉している。

アゲリハといえば。「いやだ」これもにべがない。

「サノトからもらったお小遣いを余らせて、私はその分バターとフラペチーノを買うんだ」

「お前好きだね、乳製品」

「異世界にあるもので、今のところサノトの次にすきなんだぞー」

食品と並べられてもなぁ。喜んでいいものかどうか。

嬉しいような複雑なような気持ちでちょっと笑っていると。「消費して消えるものに異世界の価値を使うなぞ不敬にあたいする!」ガィラが地をはうような声をだす。「はっ」と、アゲリハが鼻をならした。

「消費には消費の美というものがあるんだぞガィラ」

「ふざけんな。個人の消費に消える美しさなど認めかねます」

「やかましい。好事家の主張は好事家同士でやっていろ」

「横暴だ。腹に据えかねる。サノトくん恋人はよく選んだほうが良いですよ。こんな失礼な人と付き合うと君の品性に関わる。
ああそうだ。こんな人とは別れて私と付き合いましょう」

「え?」

「こらガィラ!!ひとの恋人を口説くんじゃないぞ!!」

「サノトくんが私と付き合ってくれれば、サノトくんの資産は私のものです」

「俺の財産目当てかー」

「なおわるいわ!」



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