ガィラにつられて、首が痛くなるまで上を見ながら歩く事しばらく。

サノトのアパートに到着すると、もう幾日も遊びに来ているアゲリハが、勝手知ったる風にふるまい、今日初めて来るガィラは、物珍しそうに、しかし、拍子抜けした風にも見える顔つきで、きょろきょろサノトの部屋を見まわした。

「思っていたより」ガィラが首をとめて、サノトとアゲリハの顔を交互に見る。「こちらとあちらで住居に差はありませんね」

「ないぞ。ものすごく違うのは言語と文字と空くらいだ」

「あとはクリーム?」

「あれは重大な問題だぞ。なぜトーイガノーツにクリームがないんだ」

ぶつぶつ文句をもらすアゲリハの前を横切って、ガィラがサノトの本棚を眺め始める。

興味がありそうだったので、「見てもいいですよ」と助言すると、ガィラは振り返って会釈すると、遠慮なく本棚に手を伸ばした。

ついでに、異世界眼鏡を「ここに置いておきますね」とつけたし、サノトは夕飯の準備を始めた。

といっても、夕飯はあらかじめ、あとで簡単に調理して食べられるよう準備してあるので、あとは火を入れて温めるだけだ。ちなみに、アゲリハにこわれてホットプレートを買ったので、今日は鉄板焼きだ。

いつのまにか、アゲリハがガィラの隣に立って、ガィラが食い入るように眺めている漫画に、ああだこうだと説明をしている。

「つまるところ、これは絵画を集合させた本、というわけですか」

「だろうな。本来額縁であろう部分を変形密集させ、場面が繋がるように作ってあるんだ。中に数行の説明文や台詞を入れることによって、更に理解度を上げている」

「なるほど……一枚の紙に額縁ごと絵を飾ってつなげるとは、斬新だ」

「高尚な技術だろう?これをお前に見せてみたかったんだ」

「持ってきてくれれば済む話じゃなかったんですかね?」

「お前に誘いを即答で断られたのを、私は根に持っていたんだ」

「なるほど。それは失礼しました」

「おーい。二人ともー、ごはんの準備できたよー」

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