ジェットコースターを目の前にして「あれが脱線しないとは言い切れないから、怖くて乗れない」と言っている人を無理に乗せるようなことはできない。

机に放り出されたチラシを取り下げるため、サノトが手を伸ばしてチラシを掴む。

しかし、そのチラシの向こう側を、ガィラがはっしと掴んで止めた。

「いやけどあのですね。けどやっぱり二人実証がいるのでしたら、検討する余地があるのではと、先ほど思い直していたところで」サノトがひっこめようとしたチラシのはしを掴んだまま、ガィラがぶるぶる震えながら言い訳をつのる。

「少なくとも、命に関わるほどではないのだったら、例えば、腕の一本か二本くらいの犠牲は別にいいかなと今考えていて……」

「え??腕飛んでも良いから異世界行きたいってこと??」

「たとえですよ!けど、そうですねもし異世界の美術展それも古美術なんて見に行けるのならそのくらいはお安いかもしれないというか」

「見苦しい、はっきりと言えガィラ」

チラシのはしを掴んで、綱引きのようになっていたガィラとサノトの間に、アゲリハが再び割って入る。

「腕が消し飛んでもいいと思うのなら、お前の答えはひとつだろう?
死んでも良いから行ってみたい。そう言え」

アゲリハの言葉に、ガィラがぐぅっ、と唸ったかと思えば、「……まったくそのとおりです」真っ青な顔で頷いた。



サノトが言い出した美術展行きは、お互いの都合を合わせて一週間後、せっかくだから少し長く遊ぼうということで、夜にサノトの世界に行き、一泊して朝から美術展へ向かい、気が済んだころトーイガノーツへ帰る、ちょっとした旅行みたいなプランになった。

約束の日時に現れたガィラといえば、車でアゲリハのうちに乗り込んできたかと思えば、車一杯に荷物を載せていたので、アゲリハに「なにごとだ!」と怒られていた。

ガィラいわく。まだ「死ぬかもしれない」という不安がぬぐえないので、死んだ時に一緒に持っていきたいコレクション(これでも厳選してきたらしい)を詰めてきたとのことだが。アゲリハに「こっちの車に乗るか!」と一蹴され、なくなく荷物はアゲリハの家でお留守番することになった。

05>>
<<
top