叫ぶと、相手の肩がびくっと飛び上がる。「ふざけるな!!」構わず続けた。

「よくも、よくもそんなこと言えたもんだな!!
ひとのことゴミみたいに捨てておいて、自分の都合が悪くなったら子供殺すための金貸してくれだ?ふざけんなよ!!
俺の金はな!!子供殺すために貯めてたんでもやけ酒するために貯めてたんでもねぇよ!!
俺とお前が幸せになるために貯めてたんだよ!
もしお前と俺に子供が出来たらって考えたときのために貯めてたんだよ!
どうしてその金で俺がこども殺さなきゃならないんだよ!
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!」

「さ、さのと」

「なあ、……なぁ返してよ。
お前を大事にしたいと思ってた俺を返してよ。
大事にしたいと思ってた時間を返してよ。
お前と幸せになりたいって考えてた時間を返してよ。
なぁ!!
全部全部お前に捨てられたんだ!!だから返せよ!!
俺に全部かえせよぉ!!」

激情のまま腕を振り上げ、机を叩いた拍子にグラスが転げて床に落ちた。

水のしたたる音とガラスの砕ける音がして、それを皮切りに、俺は彼女に罵声という罵声を浴びせかけた。

この半年。酒と共にかきけそうとした言葉たちが吐き出されては消えていく。

彼女の絶望した泣き顔の向こうに、半年前。捨てられて泣いた自分の顔が見えて。

笑えるほど馬鹿々々しいと思った。



――――気づけば、サノトは店の外でぼんやりしていた。

おそらく店の人間に放り出されたのだろう。彼女の姿も見当たらない。

冷たい夜に覆われた深夜の駐車場に、サノトはひとり突っ立っている。

「……ははは、」

ひきつり笑いを零したとたん、ぼろっと涙があふれてきた。

落ち着かせようと呼吸を繰り返したが、息のし過ぎで呼吸がおかしくなってくる。

落ち着こうとしたのにかえって混乱してしまい、段々気持ち悪くなってきた。

たえきれず、口をおさえてえづいていると。

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