「どうした?」
「クリーム作ってくれないかな」
「私にできるものなのか?」
「大丈夫」
氷水を下にひいて、この白い液体を砂糖と一緒に泡だて器で固まるまでかき混ぜればいいのだと説明すると、「できそうだな!」頼もしいひとことと共に引き受けてくれる。
しばらく、サノトはパンケーキを何枚も焼いて。アゲリハさんは近くでクリームをひたすらかき混ぜて。
「さのとー。うまく固まらないんだぞ」
「結構時間かかるんだよ」
「そうなのかー。もうすこし頑張るぞ」
「がんばってー」
時々しゃべりながら、パンケーキとクリームをお互いを完成させると、皿にケーキをのせて、ちょっとゆるめのクリームをもりつける。
クリームの量は、サノトはちょっとだけ。アゲリハさんはたっぷり。
お互いのパンケーキを持って食卓につき。早速、出来立てのおやつを食べ始めた。
「さのと。おいしい。これ美味しいんだぞ。どうにかなっちゃいそうなんだぞ」
「俺も久しぶりに食ったけど、おいしいねー」
「おいしいぞ。どうにかなっちゃうぞ」
「ははは。何回どうにかなるの?」
「食べるごとにだぞ」
「いそがしいねー」
口が甘ったるいと冗談もゆるくなる。そんな風に考えていた最中。部屋の外から呼び鈴の音がした。
「…………?」
不意打ちに時計を見た。
時計の時針は夜の10時をさしていて、普通に考えればこの時刻に外から呼び出されるのはおかしい。呼び出される理由も思いつかない。
だれ?なんだろう?
怖いな。でも、確かめないのも怖い。
「ちょっとまってて」アゲリハさんに一言断り席を立つと、玄関の扉からのぞき窓を見る。常夜灯の光を頼りに、呼び鈴を押したであろう人の影を目で追うと。
「み、」
息をのむ。
「サノト?誰だった?」心配して追ってきてくれたであろうアゲリハさんが、サノトの肩を後ろから掴む。
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