「矢印通りに引っ張ってみたらつるんとむけた!すごいぞ!」

「すごいよねー。企業努力ってやつ?」

「発想の勝利とも言うな」

「ははは。そうだね。
どう?それ、食べられそう?」

連続する「食べたことがないどころか存在しないレベルの食べ物」の偏見を尋ねてみると、「うーん」アゲリハさんは軽くうなったあと、ぱくりと、おにぎりを口に入れた。

「……うん。食べたことのない不思議な味がする。
でも、香ばしくて美味しい。コメによく合うな。」

「そりゃよかった」

「コメの味や形もうちのとは微妙に違う。うちのはもっと細長い形で、ここまで甘くない」

「そりゃ世界違うんだしそのくらいの差はないとね」

話しつつむしゃむしゃ食べ進めて、全て完食すると、サノトはお茶を、アゲリハさんはいそいそおやつを取り出した。

包装を開けて、生地の上を半分ほど占領しているクリームをアゲリハさんが一口頬ばる。

数秒後、とろけるような笑みを浮かべてから、二口目を頬張った。なんとも幸せそうな顔だ。

「中に黄色いものが入ってる。これはなんだ?」

「包装にプリンって書いてあるよ」

「ほほう。これはプリンか。なるほど。確かにそれらしい味だが、サノトの世界のプリンのほうがおいしい」

「あっちもプリンあるの?」

「あるぞ。でも、もっと固い。こんなにまろやかでぷるぷるしてない」

「へぇ」牛乳は飲まないけど、卵を食べる習慣はあるんだな。

卵と牛乳なんて一般的なものだと思ってたんだけど、別の場所だと当たり前が隣り合わせにならないこともあるんだな。

感心しつつ、残りのお茶を飲み干した。

ちまちま、大事そうに食べ進めていたおやつがなくなると、「そろそろ行くよー」先を促して立ち上がる。

食事のゴミをゴミ箱に捨てると、歩いて数分のところにある水族館の自動ドアを通って中に入った。

入ってすぐのエントランスに大きな水槽が二つ設置されていて、ひとつは淡水魚、もうひとつは体の大きな魚が泳いでいた。

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