……そうか。魚が食用されてないってことは、海産物っていうものもないのか。そりゃノリも見た事ないよな。

「これ、えーと、米を包んで食べる食べ物で……コメは異世界にある?」

「あるぞ」

「よし。
で、米を蒸してたものを、こう、三角に握って、この黒いシートを巻くんだけど」

「なぜ巻くんだ?」

「えっ。……なんでだろう。それは考えたことなかった。
えーと、巻いた方がより美味しいからじゃない?」

「なるほど。より美味しくなるから巻くんだな。
しかしサノト。その黒いシートを巻いた米がその後どうなるのか全然想像できない」

「そっか。わかった。俺も口頭説明は限界だ」

こういう時は論より証拠だ。買ってあとで食べよう。という流れになり、おにぎりを8つほどカゴに入れる。

ついでにお茶を二つと、「サノト。これ、くりぃむだろう?どうしてもどうしても買ってほしい」と、クリームのたっぷり乗ったおやつを強請られたのでそれもカゴに入れる。

カゴの中身をレジを通してもらい、全て同じ袋に入れてもらうと、車に戻って再出発した。

それから10分ほど運転し、目的地の駐車場に到着すると、適当な場所に停めて車を降りた。

駐車している車の数はまばらで少ない。曜日の感覚が薄れて失念していたけれど、今日は平日だったことを思い出す。

時々、ちらほら見かける赤ちゃん連れの母親を横目に見ながら、館内に近づく途中。

「あ、そうだそうだ。入る前にメシくっておこうよ」買ったばかりのコンビニ飯をかかげて見せる。

「そうだな。そうしようか」アゲリハさんの同意を得て、近くのベンチに二人で腰かけると、お茶を二つおにぎりを八つおやつをひとつ取り出し、半量とおやつをアゲリハさんに渡す。

食事を手渡されたアゲリハさんが、興味津々。と言った風に、おにぎりの包みをくるくる、まわして眺める。

やがて、矢印にそって包みを開けると、初見のくせに器用な手つきであっという間におにぎりを完成させた。「おお!すごい仕組みだ!」隣で感嘆の声があがる。

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