「いいのか!ありがとう!」

嬉しそうにされると、提案した甲斐を感じてまんざらでもない気分になる。

「ベッドは俺の使ってよ。俺は適当な場所で寝るから」

「悪いな。ありがとう」

服と下着もサノトのものを貸すと、「ちょっとちっちゃいな」と苦笑された。アゲリハさんの方が体つきが良いのでしょうがない。

シャワーに入って、歯を磨いて。お互いの寝床に入ると照明を落とした。「おやすみさのとー」向こうからアゲリハさんの声が聞こえて、「おやすみー」サノトも返事を返す。

そして、ふと、部屋の中で誰かにおやすみを言う。その感覚に既視感を覚え。

「…………」

触れそうになった傷にかたくフタを閉じた。



翌日。昨日の残りで適当な朝食をとると、アゲリハさんと車に乗って水族館へ出かけた。

水族館は隣の市にある市営施設で、サノトも行くのは久しぶりだ。

バイパス道路を使って30分ほど車を運転し、水族館の近くまでくると。「そうだ。昼ごはん買っていって良い?水族館のどこかで食べようよ」青空ランチを誘う。

「もちろんだぞ」

というわけで、さっそく、パイパス道路を降りて少し走った場所にあるコンビニに入ったのだが。「そういえばさー」シートベルトを外しながらふと思いつく。

「異世界って、コンビニあるの?」

「あるぞ」

即答だ。

「どこにでもあるんだねコンビニって」

「マーケットがあれば必然的にコンビニはできるだろう。同じ親会社が多量買いをして原価を下げ、それを小さな売り場にも卸す。広い土地を必要としないし、直営にこだわらなければ店舗展開がしやすいし、なにより消費者に利用される価値が極めて大きい」

「なるほど」

ニュースで聞きかじっただけの知識ではあるけれど、有名な某コンビニって本来はマーケットが主体なんだっけ。コンビニ主体の会社もあるらしいけど。

コンビニに入ると、小さなカゴを持って弁当惣菜コーナーに入る。

そのまま、なにも考えずおにぎりに手を出すと。「そういえばサノト。前から思っていたんだがこの真っ黒なものはなんだ?」その横から疑問が挟まった。

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