「額縁?漫画のコマのこと?」
「あの本はまんがという名前で、額縁部分はこまというんだな」
「言われてみれば漫画って、額に入った絵を並べてある感じだね」
「文章や口頭で説明されるよりも、絵に落として説明されたほうが理解度が上がるというのは定石だが、あれはこの理屈を作品にまで昇華しているな。すばらしい文化だ」
「そう?そんな風に考えて読んだことないや」
「国民が不思議がらずに読めるほど技術が浸透しているということは、よほど完成度の高い技術なのだろうよ。
初めて読む私ですら、本の中で今何がどう起きているかを理解できるからな」
とりあえず、主人公が仲間を作って、悪そうなやつを倒そうと挑むところまで読んだ。と言われ、あーそこねー。昔読んだわー。最近読み返してないから俺も読もうかなーと、思い出に華を咲かせる。
ついでに、次の場面はこうなるんだよ。と話そうとして「まだ読んでない人に向かって、先の展開を言うんじゃないぞ」軽くしかられた。アゲリハさんはネタバレ駄目派のようだ。
喋りながら席について、「ねえ、ハシ使える?」一応、二本の棒を渡して使えるかどうかを尋ねると。
「この棒はどうやって使うんだ?」用途が伝わらなかったのでキッチンに戻り、スプーンとフォークを持って戻る。
「これは使える?」再度尋ねると、「使えるぞ!」二度目でようやく受け取りが完了する。
「ところでサノト、この白い液体は……」
「ミルクを使った料理です」
「なるほどやっぱり。
それじゃあ、いただきます。サノト。
異世界初、牛の乳を使った料理と魚料理なんだぞ。どんな味がするか想像もつかないんだぞ……」
「ふつうだよ。ふつう」
「我が家の常識非常識だぞ」
「うまいこというなぁ」
アゲリハさんが、手に持ったスプーンでまずはシチュウの方をすくって口に運び……ぴん!と目を輝かせる。どうやらお気にめしたようだ。
「おいしい!甘いけど塩辛くて舌に優しい味なんだぞ!」
「そうだね。俺もシチュウ好き」
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