ひとに料理を作るのは本当に久しぶりだ。

「誰かをもてなそう」と思えるくらいは気が持ち上がってきたことだろう。良い事だと思った。

始めに野菜を切って魚の水煮を乗せ、調味料をふって混ぜるだけのサラダを作る。

次に、シチュウの材料を切って鍋に入れ炒め、水を入れて煮込んでいる内にサバをから揚げにするための下処理に入る。

サバをぶつ切りにして塩コショウ、小麦粉をつけて、160度の油で揚げていく。良い色になったらひきあげて油をきり、衣が固まったところで皿に盛り付けていく。

以上で完成だ。

うん。美味しそう。揚げ物とか久方ぶりだが、勘は鈍っていなかったようだ。

「できたよー。運ぶの手伝ってくれるー?」

向こうの部屋に呼びかけると、「はーい」アゲリハさんがダイニングに入り込んできた。

「……あれ?アゲリハさん眼鏡してる。目悪かったの?」

恐らく、本を読むためにかけたのであろうが。ずっと裸眼だと思っていた。

サノトの疑問に、眼鏡を下ろしたアゲリハさんが「ちがうちがう」笑って否定した。

「これもネックレスと同じようなものだ」

「え?それって……あ、まさかその眼鏡かけると」

「ご明察。こちらの文字が読めるようになる」

おお。文字翻訳版の道具なんてのもあるんだ!相変わらず謎かつ便利だな!

「ちなみに、お前がかければ向こうの文字が読めるようになるだろうな」

「おー!読んでみたい!」

「それは今度な。
それよりサノト、美味しそうな匂いだ。待ちきれないんだぞ」

「あ、そうだったそうだった。料理、運ぶの手伝ってくれる?」

「もちろんだぞ!」

料理の乗った器を相手が持てる分だけ渡し、自分も料理を持って、向こうの机に運び込んでいく。

「そういえば、本、どうだった?」なんとなく聞けば、「おもしろいんだぞ!」華やいだ感想が返る。

「一枚のページに絵がたくさん入ってる!不揃いな額縁に人が動く様や風景画を入れて映画のように表現するとは恐れ入った。うちにはない芸術だ」

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