「そうか。観賞用の魚も存在するのか。
お前が知っているということは、その観賞用とやらも、値段がそこそこに安いのだな?」

「安いと思うよ。すごく高いのもあるらしいけど。
俺の金で100匹は買える魚だっているよ。そういう魚は、俺の小指より小さいけどね」

「そんなに小さな魚がいるのか?」

「え?いるでしょ。
ていうか、さっきからやたら魚にこだわるけど、一体全体どういう話なのこれ?」

「うん?ああ、話が遠回りしたな。すまんすまん。
ようするにな、私の国では、こんな風に身近に魚がいないんだということを言いたかったんだ」

「魚がいない?」

「ああ。いるにはいるが、富裕層もしくは資本のある施設に、鑑賞用として所持されているくらいだ。
なにせ魚は光石のより重い海層にしかいないからな。生きているものが海の上にあがってくることはめったにないし、稀に上がって手に入れることが出来たとしても、飼育には大量の光石がいる。手に入れるのも維持管理も大変なんだ。
それに、魚の人工ふ化が成功した例も、今のところ聞いた試しがない」

「へえ……?」身近な食材に謎の説明をされ、違和感に首をかしげる。世界が違うと魚の在り方が違ったりするんだな。

「だから、初めてこっちのマーケットに入って、魚が並んでいるのを見た時はぎょっとしたんだぞ」

「そんなに珍しいなら食べてく?」

「え、」それは予想しいなかった、みたいな声と共に凝視された。よほど、魚を食べるっていうのは珍しいみたいだ。

「どうせクリームも食べたんだし、めったにお目にかからない魚料理も食べていけばいいんじゃない?今日の夕食に、俺が魚料理を作ってあげるよ」

今日はサバが安いしね。ちょうどいいよと言えば。「……それもそうか」意を決したような声でアゲリハさんが頷く。

牛の乳以上に、魚を食べるっていうのは異世界人にとって下手(げて)食いなのかな。

まあいいや。とりあえずサバ買おう。

さっきアゲリハさんが食べたいって言ってたクリームの材料もついでに買っていこうかな。

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