「異世界のマーケットって、こっちとなにか変わりあったりするの?」

まさに、「あ、異世界だー!」みたいな差異はあるのかと聞けば。

「ほとんどないな」アゲリハさんがさっくり答えた。

「へええ。そうなんだ。
あのさ、前々から思ってたけど、異世界って言う割にアゲリハさんの世界って空以外まったく異世界感ないよね?なんか普通だよね?人が手をかざすと火が出たり氷が出たりとかしないよね?」

「出るわけないだろう」

「それもそうか。うん。そっか。出ないよね普通。異世界だからって人の手から火が出るっていうのはおかしいよね。
あ、でもさ、あの車とこのネックレスは?この二つだけずいぶん現実離れしてるよね?なんか、アゲリハさんの世界の道具じゃないっぽいこと言ってたけど、あれなんなの?」

「それは……すまない。いますぐに出来る上手い説明が思いつかない。
もし万が一説明できる状況になって、その時にまだお前がこの話題に興味があるようだったら改めて話そう」

「うん?まあいいけど」

「それよりサノト、ちょっと聞きたいことがあるんだが」

「なに?」

「あれ、あれだぞ」

そアゲリハさんがサノトを「あれ」とやらに連れていく。

連れていかれた場所は魚介の生鮮コーナーだった。刺身からまるのまままで、色んな魚が並んでいる。

「お。今日はサバが安いな」値段に気を取られていると。「なあサノト。これは観賞用ではないのだろう?」アゲリハさんが変なことを聞いてくる。

「観賞用?なにいってるの?」

「そのままの意味だ」

「ええ?これ買ってなにを観賞するの?」

生きている魚ならまだしも、死んだ魚を水槽に入れて鑑賞なんてしないだろう。そういった性癖のある人はさておき。

訝し気に見つめるサノトの視線を「やっぱりか」アゲリハさんが真面目な声で受け止める。

「マーケットに並んでいるということは、この魚は食用なのだな」

「そりゃそうでしょ。観賞用の魚だってあるにはあるけど、そういうのはペットショップとかにいるよ?」

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