論より証拠だ一度試してみたいと言われたので、サノトのおごりでフラペチーノをひとつ、サノトは黒い珈琲をひとつ、ついでにアップルパイをふたつ、レジカウンターで購入した。
「はい。異世界初のフラペチーノ、どーぞ」
「……いただきます」サノトからフラペチーノを受け取ったアゲリハさんが、おそるおそる、ストローをつかんでクリームをこねまわす。
しばらくして、ぐっと眉間にしわを寄せると、ええい!と言わんばかりに口をつけた。
「どう?」
「…………」
反応がない。いや、あからさまに固まっている。
よほど口に合わなかったのかな。と、思いきや、次の瞬間、どんどんクリームが減りだした。
クリームが半分ほど無くなると同時に。「……うまい」アゲリハさんが、絞り出すようにつぶやく。
「おいしいんだぞ。いやむしろ……うますぎる。なんだこれは」
「あー、口に合わないんじゃなくて、めっちゃ口に合うほうだった?」
「うん……」
自分の珈琲を口に含むサノトの対面で、アゲリハさんが一心不乱にフラペチーノを平らげていく。
ものの数十秒後、アゲリハさんはカップの中身を綺麗に片づけると、「さのと。もうひとつ」必死におかわりをねだられた。
大変に気に入った様子なので、つれてきたかいがありこちらもうれしい限りだ。
席を立って、もうひとつフラペチーノを購入し、アゲリハさんに渡す。
二巡目のフラペチーノは、それはそれは大事そうに食べ進められた。
「甘さが優しい。ふわふわする。とろけるとはこのことだな」
「嫌いじゃないし美味しいと思うけど、俺はアゲリハさんほどクリーム好きじゃないかな。甘すぎるから。
無糖のクリームを料理に使うとかなら好きだけど」
「家で扱えるものなのかこれは」
「できるよー。なんなら今度、たっぷり作ってあげようか?」
「いいのか!」
「いいよ。この前のお礼ってことで」彼になにかしてあげられると俺の気も済むしね。
サノトの珈琲とアゲリハさんの二巡目フラペチーノが終わると、トレイを返却口にかえしてから、「折角だし、こっちのマーケットに寄って行こうか?」次の予定に誘う。
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