「のんでみたいぞ!」

「分かった。じゃあさっそく行ってみる?」

「行くぞ!」

この前とは逆の立場で、サノトがアゲリハさんを近所の喫茶店に連れていく。

サノトの住まいは市内でも特に便利な場所にあって、銀行と大型複合施設は徒歩10分。本屋と図書館は徒歩5分。駅は徒歩20分、その他諸々も徒歩20分圏内の距離にある。

サノトはその中から徒歩10分で行ける、お洒落だけどどこにでもあるチェーンの喫茶店に向かった。

見せに到着すると、そわそわしているアゲリハさんを空いている窓際の席に座らせる。

「どう?異世界初の喫茶店」尋ねてみると。「こことそっくりの別の店には入ったことはあるんだ」意外な返答が返ってきた。

「入ったことあるんだ」

「ああ。金がなくとも入って怒られそうになかったからな。中に入って座ったことがある。人の出入りや店員の動きを見てるだけでも楽しかった」

ということは、なにも頼まず座るだけ座ってそのまま出て行ったってことか。なかなか肝のいることしてるなこのひと。

「そのときに、とあるものを見てぎょっとしたんだが。この際教えてもらいたい。サノト、あれはなんだ?」

そう言ってアゲリハが指さしたのは、ちょうど二つ向こうの机に座った女性が手元に置いた、クリーム山盛りのフラペチーノトールサイズだった。

「あの、カップに山盛り乗せられた白いものはなんだ?なんの意図があってあれを飲み物にたっぷり乗せるんだ?」

「あれね、クリームなんだ」

「くりいむ?」

「あれだよ。あれ。ほら、ミルクの話をこの前しただろ?あの白いのは、ざっくり言うとそれでできてるんだ」

「げ」アゲリハが顔をしかめる。

「牛の乳をあんなにたっぷり飲むのか……」

「クリームに至っては、食べるって言ったほうが正しいかもね」

いまだ引き気味のアゲリハに、「俺があっちの飲み物飲めたんだから、アゲリハさんもきっとこっちの飲み物いけるよ」無責任なすすめかたをすると、「それもそうか」真剣な顔で頷かれた。

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