夜になると、サノトはアゲリハさんお手製の夕飯を御馳走になってから、シャワー(お風呂はないそうだ)とベッドを借りた。
「おやすみサノトー」アゲリハさんが部屋の照明を落として、一階に降りるため扉の方へ向かった。サノトにベッドを貸す代して、自分はソファで寝てくれるらしい。
彼が部屋を退出しきる前に、ごろんとそちらに顔を向けて。「今日も良い夢だった」アゲリハさんに向かって言った。
「そうかそうか。それななによりだ」嬉しそうな響きが暗闇から漏れてくる。
アゲリハさんが完全にいなくなるのを見届けたあと、サノトは反対方向に転がり目をつむった。
深い眠りにすぐ襲われ、サノトはぐっすりと眠り込む。そして数時間後。
…………再び同じ部屋の中で目が覚めた。
「おかようサノト。よく眠れたか?」明るくなった部屋の中。アゲリハさんがサノトの様子を見に、中をうかがってくる。
サノトは、即座にそちらへ振り向いて、アゲリハさんの顔を見るなり顔を顰めた。「……ねえ、あのさ。聞きたいんだけど」
「どうした?」
「俺。……そろそろ認めないといけない?」
サノトはとうとう、頭を抱えた。
アゲリハさんと言えば。「やっと目が覚めたのか?」くつくつ笑っている。
「楽しかったか?夢の中ごっこは」
「~~~~~ごっことか言うなよ!」
こちとら真剣だったんだ!真剣の真剣に夢だと信じてたんだ!
だって!酔っ払ってぶっ倒れて目が覚めたら異世界でしたなんて現実どう信じろっていうんだよ!
「言い分は分かるがな。自覚するまでにちと長すぎだぞサノト」
「悪うございましたね!」
ええいこうなりゃやけだ!ベッドを飛び降りアゲリハさんの前に立つと、「俺をこんなところに連れてきてどうするつもりだ!?」堂々と言い放つ。とたん、相手にぱちくり驚かれた。
「なにをって?」
「だから!!こんな場所に連れてこられたなりの理由があるんだろ!?さあ言え!」
勢い込むサノトの目の前で、ふうと溜息をつかれた。やれやれと言わんばかりだ。
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