「オギ。おはよう」アゲリハさんが親し気に片手を上げると、キッチンの男も「アゲリハさん!おはようございますー!」嬉しそうに片手を上げた。

「あれ?珍しい。今日はお連れさんがいるんですね」

「ああ。そうなんだ」

「それじゃ、おふたり空いてる席にどうぞー」

にっこり、男がサノトに笑いかけてくる。

勧められた通り、空いている席に二人で座ると。男が紙とペンを手にしてキッチンから出、「ご注文は?」頼む品を訪ねてくる。

サノトに代わってアゲリハさんが、油湯に珈琲、それとパンをおまかせで四つ頼むと、男性は何度も頷きキッチンの中へ戻っていった。

しばらくして。

「お待たせしましたー」男がトレイをふたつ持ってきてくれる。

トレイの上には、パンが四つとカップが二つ、サラダとスープらしき小皿がそれぞれ二つずつ、乗せられていた。

カップの中身をみて、「おや?」と首を傾げる。中に入っていたのは真っ黒。ではなく、真っ白な液体だったのだ。

「これミルクじゃない?」隣でさっそく、油湯とやらを飲んでいたアゲリハさんに尋ねると、「みるく?」大きな目で呆けられた。

「うん。だってこれ真っ白だろ?ミルクでしょこれ」

「いや。それは珈琲なんだ。トーイ…夢の中だと珈琲は真っ白なんだ」

「へー!そうなんだ!」

「おどろくだろう?
で、みるくとはなんだ?初めて聞く単語だぞ」

「え?夢の中ってミルクないの?ようするに牛の乳なんだけど」

「なに?牛の乳?どういうことだ。くわしく説明するんだぞ」

詳細をこわれたので、ミルクっていうのは牛乳のことで、ようするに動物の乳からでた母乳で、現実ではそれを飲んだり加工して食べたりする文化があるんだと。知っている限りのことを説明すると、途端、アゲリハさんが「うげぇ」という顔をした。

「なんだそれは。一般的な話なのか」

「かなり一般的な話だね。どこでも買えるよ。
おいしいし。場合によっては珈琲にもいれて飲んだりする」

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