「分かった。それじゃあ行こうか」

その前にと、美人さんが部屋から消える。戻ってくると、「ちょっとはねてるんだぞー」くしらしきものでごそごそ頭をいじられた。

ついでに、タオルらしきもので顔をごしごしふかれる。身だしなみを整えてくれているらしい。相変わらず至りつくせりな夢だ。

「おっと忘れてた。サノト。これもつけていくんだぞ」

「なにこれ?ネックレス?」

「そうだ。首にかけてくれないか?」

「なんで?」

「夢の中ではこれが必須なんだ」

言われてみれば、美人さんの首にも同じものが揺れている。

「へえ。夢の中の身だしなみって変わってるんだなぁ」

まあそういう事ならと、言われた通り装飾品を身につけた。

ちょうど、背後にあった鏡を見てみると、風変わりな飾りが自分の首にくっついていた。うん。悪くないな。

ネックレスをつけ終わると、美人さんの先導のもと部屋を出た。

部屋を出てすぐ手前には降下階段があった。

美人さんの後ろについてそれを降りると、すぐ右手にリビングが見えた。大きなテーブルと、対面に大小のソファが二つ置かれている。

どうやらここは一軒家らしい。

と、即座に判断できるほど、夢の中の映像は相変わらず鮮明だった。

リビングの奥に大きな窓があって、はめこまれたガラスから透ける光の色合いが、すっかり、夜から朝に変化していた。

吸い寄せられるように窓辺へ近づくと、相変わらず不思議おかしい空が見えた。

「空は青くなったけど、あのカラフルな星は朝になっても消えないんだ。まぶしすぎて若干見えにくくはなってるけど……」

「雲がかかるところは現実といっしょだ」

「あ、ほんとだ。雲が出てる。でも太陽がないね。外の明るさはどうなってるんだろう」

「星の発光が時間によって微妙に変わるらしい。だから、夜は暗く見えるし朝は明るい」

「それよりもサノト。食事へ行こう」そう言って、美人さんがリビングを出ていく。慌ててついていくと、そのまま玄関まで誘導される形になった。

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