朝日の差し込む気配に起こされて。目を開けると。
「おはようサノト。よく眠れたか?」
……いまだに夢の中だった。
「すごい」
「なにが?」
「夢を見たまま朝になった」
「おお。そうか。それはすごいな」
苦笑しながら、椅子に座っていた美人さんが立ち上がる。その際、机に何かを折りたたんで置いた。
「それなに?」聞くと、美人さんが再びそれを持ち上げて「新聞だぞ」教えてくれた。
「へー。夢の中でも新聞ってあるんだ」
「そうみたいだな」
「でも俺新聞読まないなー。昔は実家の親が新聞取ってて、俺もテレビ欄とかはしょっちゅう見てたけど、最近はスマホがあるからネットの記事しか読まないや」
「ああ。スマホ。あれは肩甲骨が常に内向きになるから肩がひどくこりそうだ」
「はは。そうだね。スマホ中毒者の健康ストレッチとかよく見るよ」
「健康法か。それもどこにでもあるしどこにでも流行るものだな」
「そうなんだ。夢の中でも健康法なんて流行るんだね」
「とういうよりは、現実も夢の中も実際は大差がないだけだろう」
「ふーん?変わってるのは空だけなんだ」
そういえば、夢の中でも電波はつながるのかな。
疑問のままスマホを取り出してみると、アンテナは……ひとつもたっていない。圏外の文字が並んでいる。
「夢の中と現実は、当たり前だけど電話が通じないんだね」
「それはそうだろう。そもそもここは存在の違う場所にあるからな」
「存在の違う場所?」
「そうだ。異世か……夢と現実はな。本来同じ場所に存在するんだが、お互いが交わらない場所に位置している。だから、通じるものも通じない」
「へぇ。なんか難しいね」
「そうだな。
それよりサノト。朝ごはんは食べるか?」
「うん。たべる」
「作るか?それとも外に食べに行こうか?」
「え?外にも行けるの?すげー。じゃあ食べに行こうよ」
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