高校生のときから10年。付き合っていた彼女に浮気をされ捨てられた。
付き合いの長さに飽き飽きしたと、ぐうの音も出ないほど単純な理由で捨てられたサノトといえば、その、付き合いの長さの分だけショックを受けた。
同じ高校に入り、稀有なことに同じ会社にも入って、順当な流れから結婚の話までしていたのに。あんまりな話である。
しかも、彼女が浮気した相手はサノトと折り合いの悪い上司で。さらに上司は既婚者で。ようするに浮気かつ不倫のすえ捨てられてしまった訳だ。
捨てられたあと、サノトがなにをしたかと言えばまず仕事を辞めた。
元カノと、彼女が新しく選んだ男のいる仕事場に通い続けるのが土台無理だったからだ。
仕事を辞めたあとは、傷心から再就職のやる気が起きず家の中でひたすら酒を飲み続けた。
働かなくても、結婚のために貯めておいた貯金があったので生活には困らなかった。……困らなかったけど。
自気づけば半年が経っていて、自堕落のやめ時を完全に見失っていた。
相変わらず、サノトは酒を飲んでは寝落ちするを繰り返している。
このままじゃダメだよなぁ。とは思いつつも、自分の中にふんぎりが見つからない。
こんな毎日、いつまで続くんだろう。何度も繰り返し考えたことを今日も考えながら――――目が覚めた。
まぶたに差し込む照明の光が眩しい。目をこすると頭が痛んで、ついでに喉が乾く。水を飲みにいこうと、半身を起こしたところで。
誰かが隣で寝ていることに気がついた。
「――――…………!?」
ぼやけた思考が一気に覚醒すると、ついでに、寝ている場所が自分の部屋でないことにも気づいた。
ここどこ!?この人だれ!?
パニックに陥るサノトのとなりで、その時、「ん……」寝ていた人が起き上がった。
誰かさんは、サノトと同じ目線まで起きると、「おはようサノト。よく眠れたか?」こちらの睡眠を労ってくれる。
その、相手の顔を見てさらに凍り付いた。
誰かさんは、尋常でないほど美人な男だったのだ。
抜けるような肌に、切れ長の目、艶めいた髪。どこをとっても完璧だ。
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